激安ロボットでバイオ分析を自動化!カルナバイオの中国メーカーDobot MG400導入事例

激安ロボットでバイオ分析を自動化!カルナバイオの中国メーカーDobot MG400導入事例

お役立ち情報 2025.07.07

バイオ創薬の研究では、スクリーニングや活性評価などに多大な労力と時間がかかります。特に多検体を扱う分析業務は、夜間や深夜帯に及ぶことも珍しくありません。また、人手不足が深刻化する中、深夜作業の負担やヒューマンエラーのリスクは企業にとって大きな課題です。

一方で、ロボットでこれらを解決したいというニーズは確実に高まっています。しかし高度なロボット設備の導入は数百万円から数千万円と高額です。そのため、コスト面で二の足を踏む研究機関・企業も少なくありません。

今回は、日経ロボティクス「バイオ創薬研究の分析実験を激安アームで自動化 カルナバイオがDobotのロボット導入、夜間に作業」の事例を紹介します。

協働激安ロボットデパレタイザ導入時における補助金活用

カルナバイオサイエンスが自動化に踏み切った背景

激安ロボットを導入したカルナバイオサイエンス

カルナバイオサイエンスは、「キナーゼ」など医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。同社は創薬部門と、大手製薬企業に向けた物質提供や分析支援サービスを行う創薬支援部門の二本柱で事業を展開しています。

創薬支援部門では、数百種類にも及ぶキナーゼの分析を請け負っています。しかし、分析に利用していた装置のサポートが2024で終了すると発表されました。また、消耗部品も入手しづらくなっていたため、数年前から代替を検討し始めた。

代替として導入した装置(BioPhase 8800)には、プレートの自動投入機構が無く、夜間の大量サンプル処理を人の手で行う必要がありました。人手不足の中で深夜稼働を維持するには、新たな自動化手段が不可欠だったのです。

Dobot MG400 導入の決め手

同社が選んだのは、中国メーカーDobotが手がける4軸ロボットアーム「MG400」。本体価格は数十万円レベルと、いわゆる「激安ロボット」のカテゴリーに入ります。

かつて「安かろう悪かろう」と見られた中国メーカーの産業ロボットですが、近年急速に進化しており、国内メーカーにも劣らない性能を備えています。導入テストの段階で十分な精度を確認できたこともあり、同社はMG400を即決購入しました。

自動化した作業の流れ

プレート準備
あらかじめサンプルをセットした数十枚のプレートに、それぞれ個別IDとしてのQRコードを貼付します。

プレートのストック
複数のプレートを縦積みで収納できるラックを、ロボットアームの周囲に配置しておきます。これにより、一晩で多数のプレートを効率的に扱えるようにします。

プレートの把持と搬送
ロボットアームは、市販の電動型平行グリッパを使用してプレートの短辺方向を側面から挟み込み、ラックからプレートをピックアップします。

QRコードの読み取り
プレートを搬送する際に、装置に投入する前にスキャナでQRコードを読み取り、プレートIDと分析データを紐付けます。

キャピラリー電気泳動装置への投入
QRコードで認証されたプレートを、ロボットがキャピラリー電気泳動装置に投入します。

分析終了後の回収
分析が終了したプレートをロボットが装置から回収し、再びラックに戻します。

夜間の自動運転
上記の作業を繰り返すことで、夜間の無人運転を実現し、人的負担の大幅な軽減と効率化を図っています。

システム構築の工夫

同社はMG400の導入にあたり、シンプルながら高い完成度の自動化システムを独自に構築しました。具体的には、

  • プレートを掴む専用ハンドを設計し、市販の電動平行グリッパと組み合わせた
  • プレートにQRコードを付けてID管理し、分析結果と紐付ける
  • PythonでアームをTCP/IP制御しつつ、分析装置側の操作はRPA(Robotic Process Automation)で行う

分析装置にLANポートはあったものの、純正の外部制御APIは無かったため、Windowsのリモートデスクトップ(RDP)を活用し、RPAで装置画面のボタンを仮想的にクリック操作するというユニークな工夫を凝らしました。

また、OpenCVによる画像認識を組み合わせることで、装置の状態や画面表示を検出しながら確実に自動化を進めています。

こうした取り組みにより、ロボットのハード・ソフト双方で最小限の投資ながら、夜間の完全自動処理を可能にしました。

自動化・夜間無人運用の効果

導入したMG400を使った新システムは、夜間に最大15枚以上のプレートを連続処理でき、人が立ち会わずとも測定・データ解析まで完了する仕組みを構築。

従来は深夜帯に人が交代で出勤していたものが不要になり、労務負担を大幅に削減するとともに、人件費・光熱費などのコストダウンにもつながりました。
また、人の出入りを抑えることで、分析室内の温度管理や感染対策といったESG(環境ガバナンス)、SDGsの観点でも好影響が期待できます。

導入による今後の可能性

今回の事例は、安価なロボットでも工夫次第で研究開発の自動化できることを示す好例です。
同社では同様の仕組みを2セット稼働させています。今後はプレート投入以外のハンドリングやデータ処理など、さらなる自動化領域の拡張も検討されています。

また、今回培ったPythonやRPAによる低コスト自動化のノウハウは、物流・製造分野の「パレタイザー」(荷物積み付けロボット)や材料ハンドリングなど、他分野へも十分応用可能です。
人材不足・ESG経営・省力化が求められる現代において、こうした激安ロボットの活用は企業価値向上に直結する有力な投資といえるでしょう。

まとめ

「ロボット=高額」という常識は、すでに過去のものです。
同社の事例は、数十万円レベルの中国メーカー製ロボットでも、適切なシステム設計と工夫で十分に夜間無人化を実現できることを証明しました。
自動化は決して大企業や大予算のものだけではありません。物流や製造業の現場でも、このような柔軟な視点で「激安ロボット」の可能性を見直してみる価値は大いにあります。

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弊社では、Dobotをはじめとする中国メーカー製のロボットから国内メーカーを取り扱っております。最適なロボット選定からシステム開発・立ち上げまで一貫してご支援可能です。
「自社にも自動化を」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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