目次[]
バリテーションの概要

バリテーションとは
バリデーション(validation)は、「確認」や「検証」を表す言葉です。
動詞の「validate」は「有効にする」などと訳します。また、正当性を立証していないものに対して「有効であるかを検証する」意味を含みます。
ビジネスシーンでは、決められた作業工程のなかでの一連の確認プロセスと仕組みを「バリデーション」と呼びます。
GMPにおける「バリデーション」と「ベリフィケーション」の違い
製造業や医薬品業界などで品質管理を徹底するために欠かせないのが、**GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)**です。GMPにおいては「バリデーション」と「ベリフィケーション」という2つの重要な概念が存在しますが、これらはしばしば混同されがちです。
しかし、両者は目的もタイミングも異なるプロセスであり、それぞれの役割を正しく理解して運用することが、高品質な製品の安定供給につながります。
以下に、それぞれの違いをわかりやすく比較した表を示します。
項目 | バリデーション(Validation) | ベリフィケーション(Verification) |
---|---|---|
目的 | 製造プロセスが一貫して高品質な製品を作れることの証明 | 製品が設計どおりの品質であることの確認 |
対象 | 製造プロセス全体 | 実際に製造された個々の製品 |
タイミング | 製造前または初期段階で実施(プロセス設計・変更時など) | 製品が製造された後に実施 |
確認内容 | プロセスの予測可能性と信頼性 | 製品が設計通りに機能・規格に適合しているかの検証 |
目的のイメージ | 「このプロセスで作れば、いつでも良いものができる」 | 「この製品は設計通りにできている」 |
バリデーションが必要な理由
目的とする品質に適合した製品を一貫して製造できることを証明するために必要と言えます。これは医薬品製造における品質保証の要とも言える活動です。
製品の品質を確認する手段として、出荷前に行う「出荷試験」があります。しかし、これは製品の一部を抜き取って規格に適合しているかを確認するものです。そのため、「出荷検査」だけでは全体の品質を保証するには不十分です。
例えば、10mg錠の錠剤において、有効成分がすべての錠剤に均一に含まれていることを確認するには、検体が製造ロット全体を代表している必要があります。限られた検体から、全体に成分が均一に分散されていることを推定しなければならないのです。
特に無菌性が求められる製品では、数点の検体から全製品の無菌性を保証する必要があり、その難しさは言うまでもありません。
このように、出荷試験だけでは製品全体の品質保証には限界があります。そこで、バリデーションを実施することで、製品の品質が常に保たれるよう、最適な製造条件や手順が設計・検証され、文書化されます。
バリデーションは、新薬・ジェネリック医薬品を問わず、すべての医薬品に必要です。製品の品質を安定的に保証するためには、バリデーションに基づく製造の仕組みづくりが欠かせません。
各業界でのバリデーションの使い方
医薬品業界におけるバリデーションの使い方
定義
「高品質な医薬品を安定して製造するためのプロセスを確認・検証・手順化しこれを文書化すること」を指します。
目的と役割
- 製造方法の適切性の確認
製造条件や薬剤条件が適切かを検証。- 効能の安定性の検証
服薬後の効果が一定であるかを確認。- 品質の均一性と成分配合の正確性の確保
ムラのない品質と正確な配合を実現。バリデーションの具体的な使い方
- 安全性を確保するために事故を防ぐ手段として活用。
- 開発段階だけでなく、実際の製造現場でも実施が必要。
IT業界におけるバリデーションの使い方
定義
「成果物が規定の条件や仕様に適合しているかの検証や確認」を指します。
目的と役割
- データ形式の整合性やマニュアルとの一致の確認。
- 意図したとおりの成果物であるかの検証。
- 複雑な開発プロセスの中で目的からの逸脱を防止。
- 用途や条件に適合しているかの判断材料。
バリデーションの具体的な使い方
- バグをなくし、質の高いWebサービス提供に貢献。
- 入力フォームのチェック時にエラー検出の手段として使用。
GMP・ICHガイドラインが示す世界共通のルール
医薬品の製造・品質管理において、「なんとなく良さそう」では許されません。
誰が・いつ・どこで・どう作っても、常に安全で高品質な製品ができること——それを保証するためには、明確な基準とルール=規制要件が必要です。
その中心にあるのが、GMP(適正製造基準)とICHガイドラインです。
GMPは「製造現場で守るべき実践的ルール」、ICHは「国際的に統一された技術的ガイドライン」として機能し、どちらも製薬企業にとって必須の知識・実務指針です。
この2つの関係性を理解することで、製品ライフサイクル全体を通じた品質保証の全体像が見えてきます。
薬品工場におけるバリデーションの対象
設備(Facilities)
設備バリデーションは、製品を製造する施設が適切に設計・建設され、維持されているかを確認することを目的とします。
- 対象:クリーンルームの設計、HVAC(暖房・換気・空調)システム、照明、建物の構造やレイアウトなど
- 目的:製造環境が製品の品質に悪影響を与えないこと、衛生状態や安全性が保たれていることの確認
システム(System)
システムバリデーションでは、製造工程を制御・監視するシステムが信頼性を持って機能しているかを検証します。
- 対象:温度・圧力管理システム、製造データ記録システム、品質管理ソフトウェアなど
- 目的:システムが設計通りに正確かつ一貫して作動し、製造工程が適切に管理されていることを保証
装置(Equipment)
装置バリデーションでは、製造に使用される機械や器具が適切に動作し、製品品質に影響を与えないかを確認します。
- 対象:製造・包装・保管に使用する装置、測定器、分析装置など
- 目的:装置が設計通りに機能しているか、必要な性能を発揮できているかを評価
プロセス(Processes)
プロセスバリデーションでは、製造全体の工程が常に高品質な製品を生産できるかを確認します。
- 対象:原材料の受け入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程
- 目的:工程が安定しており、設計された品質基準を満たしていることの検証
ユーティリティ(Utility)
ユーティリティバリデーションでは、製造に必要な水、空気、ガス、電力などのインフラが安定して機能しているかを確認します。
- 対象:純水の品質、空気の清浄度、ガス供給の安定性、電力供給など
- 目的:これらのインフラが製品や製造工程に悪影響を与えないことの検証
バリデーションの種類
GMPにおけるバリデーションは、製造プロセスの各段階で製品の品質と安全性を確保するために実施されます。
その目的は、一貫して高品質な製品を製造することにあります。
また、バリデーションにはいくつかの種類があります。それぞれに異なる目的や対象があります。以下に、代表的なバリデーションの種類についてご紹介します。
- 適格性評価
- プロセスバリデーション
- 再バリデーション
- 変更時のバリデーション
適格性評価(クオリフィケーション)
まず、「適格性評価」は、製造設備や装置に対するバリデーションです。これは、設備が設計通りに機能することを確認し、安定した品質を維持できるかを評価します。
特にハードウェアに対して実施されます。また、ソフトウェアで制御される機器も対象となります。したがって、システム全体が正しく機能しているかの検証も含まれます。
この評価を通じて、製造設備の信頼性と再現性が確認されます。その結果、製品の一貫性を維持する基盤が構築されます。
プロセスバリデーション
次に、「プロセスバリデーション」は製造プロセス全体を対象とするものです。
その目的は、常に高品質な製品を安定して生産できることを証明することにあります。
この評価では、適格性評価に加えて、各種の基準書・手順書・操作マニュアルなども確認されます。
つまり、ハードとソフトの両面から総合的にプロセスを評価します。
なお、プロセスバリデーションには次の2種類があります。
- 予測的バリデーション:新製品や新プロセスの導入前に実施
- コンカレントバリデーション:製品の製造と同時に実施
これらは、いずれもプロセスが設計通りに進行しているかを確認するために重要。
再バリデーション
「再バリデーション」は、既存のバリデーション結果を再確認するプロセスです。
これは、設備の変更や経年変化、技術進歩などが原因で影響を受けていないかを確認します。
さらに、定期的な品質確認の一環としても実施されます。
このプロセスを通じて、製品の品質と安全性が常に保たれているかを確認します。
結果として、製造プロセスの信頼性が高まり、将来的なリスク軽減にもつながります。
変更時のバリデーション
最後に、「変更時のバリデーション」は、設備・プロセス・材料などに変更が加えられた際に実施されます。
その目的は、変更が品質や安全性に与える影響を評価することです。
つまり、変更後も製品が規定された品質基準を満たしているかを確認するためのプロセスです。
このようにして、変更による影響を最小限に抑えます。
結果として、製品の一貫性と品質が守られ、安全で信頼性の高い製品を継続的に提供できます。
適格性評価の手順
適格性評価(Qualification)は、製造設備や装置が設計通りに機能するかを確認するためのプロセスです。また、製造工程において高い品質を維持できるかも評価します。
この評価は、製造の各段階で実施され、異なる観点から設備の適切性を検証します。
ここでは、適格性評価を構成する以下の4つのステップについて詳しく説明します。
設計時適格性評価(DQ)
据付時適格性評価(IQ)
運転時適格性評価(OQ)
性能適格性評価(PQ)
設計時適格性評価(DQ)
まず最初に行うのが、設計時適格性評価(Design Qualification, DQ)です。これは、製造設備やシステムの設計が品質と安全性を確保するための要件を満たしているかを確認するステップです。
この段階では、設計仕様書や機能仕様書、リスク分析などの文書を基に評価します。また、設備やシステムの設計が規定基準やガイドラインに適合しているかを確認します。この評価はプロジェクトの初期段階で実施されます。
したがって、後の段階での問題発生を未然に防ぐために重要な役割を果たします。
そのため、DQはプロジェクトの初期段階での重要な検証ステップといえます。
据付時適格性評価(IQ)
次に行われるのが、据付時適格性評価(Installation Qualification, IQ)です。
これは、製造設備やシステムが正しく設置され、設計通りの状態で稼働準備が整っているかを確認するプロセスです。
この段階では、設備やシステムの物理的な設置状況、配線、配管、接続の適切さを確認します。また、すべてのコンポーネントが設計通りに配置されているかをチェックします。また、設備が所定の環境下で正常に動作するかどうかも確認されます。
IQは、設置ミスや初期トラブルを事前に把握し、安定稼働への準備が整っていることを保証できます。
運転時適格性評価(OQ)
続いて、運転時適格性評価(Operational Qualification, OQ)を行います。
これは、設置された設備やシステムが、実際の運転条件下で期待通りに動作するかを確認するステップです。
たとえば、温度、圧力、速度などの運転パラメータが安定して目標値を維持しているか。また、センサーや制御装置が正確に機能しているかを検証します。
OQの結果により、設備が問題なく運転できる状態にあるかどうかが判断されます。
そのため、製造開始前の重要な確認工程となります。
性能適格性評価(PQ)
最後のステップが、性能適格性評価(Performance Qualification, PQ)です。
これは、実際の製造条件下で設備やシステムが安定して設計された性能を発揮できるかを検証するプロセスです。
ここでは、実際の製造を通じて、生産量や品質基準が継続的に満たされているかを確認します。
言い換えれば、製造ラインが本番環境で安定稼働し、高品質な製品を一貫して生み出せることを確認する工程です。
PQの実施により、製造プロセス全体の信頼性が保証されます。
これにより、最終製品の品質保証にも直結します。
iCOM技研へのお問合せ
iCOM技研では、協働ロボットとAIを中心にシステムインテグレーター事業を展開しております。協働ロボットシステムの導入、ソフトウェア開発やAI開発も相談いただいております。
