製造業や物流の現場で活躍する協働ロボット(コボット)が、近年は映画やCM、ミュージックビデオ(MV)などの映像制作分野でも注目を集めています。
従来のドリーやクレーンでは実現しにくい繰り返し可能で正確なカメラワークや、人との安全な共演を可能にする点が評価され、世界各地で導入事例が広がっています。
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映像制作現場における課題とは?

映像制作の現場では、常に解決すべき課題が存在しています。特に「高額な機材コスト」「カメラワークの再現性」「スタッフへの負担」「映像表現の制約」は、多くの制作会社やクリエイターを悩ませてきました。ここでは、それぞれの課題を整理して解説します。
高額な機材コストが制作を圧迫
まず大きな壁となるのが、モーションコントロールカメラや特殊リグのレンタル費用です。これらは非常に高額で、1日あたり100万円規模に達するケースもあり、限られた予算での撮影を難しくしています。
カメラワーク再現性の難しさ
次に問題となるのが、カメラワークの再現性です。人が操作する機材では、全く同じ動きを繰り返すことは不可能に近く、特に合成映像やVFXを駆使する制作現場では大きな制約となります。
撮影スタッフへの大きな負担
さらに、大掛かりな機材設営や長時間にわたる撮影は、撮影スタッフに大きな負担を強います。これは体力的な疲労だけでなく、スケジュール調整や人員確保といった面でも大きな課題を引き起こします。
新しい映像表現への制約
加えて、クレーンやドリーといった従来の撮影機材には軌道の限界があります。そのため、革新的なアングルや新しい映像表現を実現するのが難しく、クリエイティブな挑戦を阻害する要因となっています。
協働ロボット撮影がもたらす解決策
映像制作の課題に対し、協働ロボットを活用した撮影は有効な解決策となります。ここでは、その主なメリットを整理してご紹介します。
高品質な繰り返し撮影を実現
まず、プログラムされた軌道により、全く同じカメラワークを何度でも再現できます。これにより特殊効果や合成を多用するシーンでも、安定したテイクを重ねることが可能です。
安定したブレのないカメラワーク
次に、協働ロボットは人の手や簡易リグでは難しい滑らかな動きを実現します。食品CMや製品紹介映像など、精度が求められる撮影で効果を発揮します。
コスト最適化による効率的な運用
また、高額なモーションコントロール機材の代替として活用できるのも大きな利点です。協働ロボットなら低コストで導入でき、長期的な運用費も抑えられます。
新しい映像表現への挑戦
さらに、ロボットならではの360°旋回や複雑な上下動を自在にプログラム可能です。従来機材では不可能だったアングルや表現が現実のものとなります。
柔軟で安全なスタジオ運用
加えて、協働ロボットは安全機能を標準搭載しているため、出演者の近くでも安心して使用可能です。これにより現場の自由度が大幅に広がります。
ロボット撮影自動化の事例
フランス:XD Motion「Arcam」システム
フランスのXD Motion社は、ユニバーサルロボットUR10を用いたロボットカメラシステム「Arcam」を開発。
欧米や中国のテレビ局に導入されています。また、AR合成やスポーツ中継などで安定したカメラワークを提供しています。
英国・米国:WPP × Boston Dynamics「Atlas」
広告会社WPPはBoston Dynamicsの人型ロボット「Atlas」にシネマカメラを持たせ、自動車プロモーション映像を撮影。
人が立ち入れない場所での長時間撮影や、繰り返し正確なダイナミックカットを実現しました。