【ソニー】不確実な環境でもロボットが安定歩行する「GS-SMPC」

【ソニー】不確実な環境でもロボットが安定歩行する「GS-SMPC」

AI 2025.02.27

近年、ロボットの活躍する場は急速に拡大しています。しかし、実環境では予測できない障害物や不正確なセンサーデータの影響を受けることが多く、安定した動作を維持することが課題となっています。今回は、ソニーはこの問題に対処するために開発した、新たなモデル予測制御技術「GS-SMPC(Stochastic MPC with Guard Saltation Matrix)」について紹介します。

ロボット活用の課題

ロボットが不確実な環境で活動する際の課題には、以下のような点が挙げられます。

ロボットの転倒イメージ
  • 環境の不確実性:路面の凹凸や障害物、環境変化によりセンサーデータに誤差が生じる。
  • 動作の失敗リスク:ロボットが転倒したり、計画した軌道から逸脱する可能性。
  • 従来技術の限界
    • 深層強化学習による適応型学習は発展しているが、予測不能な動作が発生するリスクがある。
    • 従来のモデル予測制御(MPC)では、接触時の不確実性を適切に扱う方法が確立されていない。

モデル予測制御技術「GS-SMPC」の技術概要

GS-SMPCは、従来のMPC技術*を改良し、ロボットの足が地面に触れる際の不確実性を考慮することで、より安定した動作を可能にする技術です。

*MPC技術…モデル予測制御

接触時の不確実性のモデル化

ロボットの歩行中、足が地面に接触すると動きが変化します。この変化を考慮し、状態をガウス分布(確率分布の一種)として扱うことで、不確実性を明示的に計算します。

跳躍行列(Saltation Matrix)とガード跳躍行列(Guard Saltation Matrix)の活用

  • 跳躍行列:ロボットの足が地面に触れる前後の状態変化を数学的に表現。
  • ガード跳躍行列:地面との距離を考慮し、適切な制御を行う仕組み。

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リアルタイム最適化の工夫

  • 計算負荷を抑えながら、リアルタイムで適切な動作を決定。
  • カルマンフィルタを使い、予測誤差を修正し、精度を向上。

実験と評価

GS-SMPCの性能は、シミュレーションおよび実機実験で検証されました。

シミュレーション結果

  • ソニーの6脚車輪ロボット「Tachyon 3」を使用し、高さ認識に±4cmの誤差を持つ環境での歩行テストを実施。
  • GS-SMPCを適用した場合の成功率は100%、従来のMPCやヒューリスティックMPCでは50%未満の成功率。
GS-SMPCのシミュレーションテスト

実機テスト

  • Tachyon 3にGS-SMPCを適用し、1〜2段のステップをスムーズに昇降できることを確認。
  • オンボードPC(Intel i7-8850H)での最適化計算時間は平均29msと、リアルタイム処理が可能な範囲。
GS-SMPCの実機テスト
ソニー 実機テストの様子
https://arxiv.org/pdf/2403.14159

モデル予測制御技術「GS-SMPC」の今後の展望

ソニーはGS-SMPCの技術を強化学習と組み合わせることで、さらなる発展を目指しています。

強化学習との統合

  • GS-SMPCによって導き出された動作軌道を、強化学習の初期値や目標値として活用。
  • 試行錯誤の回数を削減し、より効率的な学習を実現。

課題の解決

  • 2足歩行ロボット「EVAL-03」への適用では、成功率は向上したが、完全な安定性には課題が残る。
  • 凹凸のある地面での歩行精度向上に向けたさらなる研究が必要。

参考文献

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