近年、ロボット技術の発展が目まぐるしく進んでいます。建設現場の効率化と安全性向上を目指し、大成建設株式会社とTechShare株式会社が共同開発した次世代の巡回監視システム「T-Inspection NX」。また、四足歩行ロボットを活用し、現場内の施工状況確認と安全管理を自律制御と遠隔操作で可能にする革新的な取り組みです。
この記事では、電子デバイス産業新聞で紹介された大成建設とTechShareが開発した4足歩行ロボットについて詳しく解説します。
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四足歩行ロボット「TI」
大成建設株式会社とTechShare株式会社が共同開発した「T-Inspection NX」は、建設現場における施工品質や安全管理を自律制御や遠隔操作で可能にする次世代の巡回監視システムです。四足歩行ロボットが建設現場内を移動し、状況を瞬時に監視・記録します。 特に首都圏の建設現場で実用性が確認され、今後の発展に期待が寄せられています。
開発の背景
四足歩行ロボットを活用し、現場内の施工状況確認と安全管理を自律制御と遠隔操作で可能にしようと開発がすすめられました。
建設業界では、災害労働者の不足や現場の安全確保が大きな課題となっています。現場での安全性には、以下のような課題があります。
建設現場での主な事故と事例
墜落・転落事故
高所作業の機会が多い建設現場では、転落や墜落などの落下事故のリスクが非常に高くなっています。現に、建設業での死傷事故の原因としてもっとも大きなものが、高所からの落下であるとされています。
崩壊・倒壊事故
埋設物の掘削時における溝や法面などの崩壊、あるいは工事中の建造物の倒壊などに作業員が巻き込まれる事故も想定されます。
狭小地でブロックを積む作業を行っていた作業員が、ブロックの倒壊に巻き込まれた事故の例もあります。
激突される事故
大きく重い機械や建材を吊り上げたり、移動させたりする機会の多い建設現場では、それらの機械や建材が作業員に激突することで生じる事故の可能性もあります。
飛来・落下事故
建材や機器・道具類の落下や飛来による事故も想定されます。建設機器で吊り上げて移動させていた建材が落下し、それに作業員が接触したことによる負傷の事例があります。
挟まれ・巻き込まれ事故
機器や自動車での作業時に起こる挟まれや巻き込まれも、建設現場で頻発する事故の1つです。ドリル作業中に指が巻き込まれて刃で怪我をしたケースなどがあります。
四足歩行巡回監視システムが改善する事故の要因
作業現場の環境要因
落下の危険がある高所の作業場に手すりを設置していなかったり、足場が確実に組み立てられていなかったなど、作業環境そのものが現場の安全を損ねる状況であったケースです。
大成建設の取り組み
大成建設は2021年5月に「T-Inspection」という遠隔操作システムを発表しました。自律制御の導入など機能の改良を重ね、今回の「T-Inspection NX」に至りました。 同社は今後もAIやIoT技術を活用し、建設現場のデジタル化を推進してきましたが、四足歩行ロボットの活用はその中でも革新的な一歩
TechShareとの協力で実現する高度な監視システム
TechShareは技術ロボットと自動制御に強みを持つ企業です。 今回の共同開発では、任天堂の技術力が「T-Inspection NX」に大きく注目しました。 いわば完成、ロボットの自律移動機能や高精度カメラを活用した短期監視機能は、TechShareの一時専門支援されています。また、遠隔地からの映像や音声の遅延を最小化する通信システムも、両社の協力によるたまものと言えます。
以下で、「T-Inspection NX」の
建設現場の様々な環境条件での遠隔管理が可能
日々変化する建設現場の環境条件に柔軟に対応できるよう、遠隔操作機能を決定づける前方カメラの改良を行いました。四足歩行ロボットの最新機種「GO2」本体に装備されている前方カメラに加え、3DLiDARの情報を可視化することで、全方位の障害物を正確に確認することができます。また、前方のパンチルトズームカメラは、4K画質、光学3倍・デジタル5倍ズームと大幅に性能が向上し、赤外線カメラの装備も可能です。
自律巡回監視機能を搭載
遠隔操作機能に加え、あらかじめ指定したポイントを自律制御で自動巡回する機能を搭載しています。また、全方位カメラ等を装備した四足歩行ロボットにより現場内の動画情報を自動で収集することが可能です。それにより、建設現場の状況に応じて適宜、ロボットの自律制御と遠隔操作を切り替えることで、確実かつスムーズに巡回監視を行えます。
映像・音声通話による現場との円滑なコミュニケーションを実現
現場と管理事務所間で映像・音声を遅延なく伝達できるよう、映像の品質や画面構成および音声通話の機能を向上させ、双方の円滑なコミュニケーションが可能です。
システム搭載ロボットの運搬、設置の利便性を向上
本システムを搭載した四足歩行ロボット本体、付属品専用ケ-ス、遠隔操作器具を専用ケ-スに収納可能で、運搬時および遠隔操作場所への設置時の利便性が向上します。
自動給電への対応機能を搭載
アームロボットを活用したロボット自動給電システム「T-ChargeX」と連携し、四足歩行ロボットのバッテリー残量に応じて適宜、自動給電されることで長時間の稼働が可能です。
建設現場での自由自在な階間移動の実現
建設現場において、ロボットの階間移動システム「T-MoveX」と連動することにより、自由かつ安全に階間移動を行うことが可能です。
今後の四足歩行ロボットの活用
建物竣工後の自動開閉扉や本設エレベータの稼働とロボット動作を連動させて、異なる部屋・フロア間を自由自在に往来できます。これにより、システムの適用可能範囲の拡大を図ります。また、施工から維持管理を含めた建物のライフサイクルに関わる統合管理システム「LifeCycleOS」と連携して活用できるようにするとのことです。大成建設では、建物の維持・管理・運用においてリアルタイムに活用できる建物情報のDXを推進しています。
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まとめ
四足歩行ロボットの導入は、建設現場の効率化と安全性向上に大きく取り組む。また、ロボットは危険な環境でも活動できるため、現場での事故リスクが減少します。将来的には、このようなロボット技術が業界全体に普及し、建設現場の完全自動化や高度な管理が可能になりますシステムの構築が期待されます。