近年、ロボット技術の発展が目まぐるしく進んでいます。スイスのETH Zurich社が開発したアーム付きの4脚歩行ロボット「ANYmal」を紹介します。
この記事では、日経Roboticsで紹介されたANYmalが強化学習を用いて実現した自律的なドア開け技術について詳しく解説します。
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従来ドア開けの自動化で課題だったのは?
ロボットが家庭やオフィスで自由に活躍するには、多くの技術的な壁を乗り越える必要があります。その中でも「ドアを開ける」という一見シンプルな課題が、実はロボットにとって非常に難しいものでした。
従来、「なぜドア開けが難しいとされてきたのか」説明していきます。
ドアの多様性
ドアには「内開き(pull)」と「外開き(push)」の2種類があり、これらに対する適切な操作が異なります。さらに、左開きや右開きなどの構造的な違いも存在し、事前にすべてを識別するのは困難でした。
複雑な操作
ドアを開ける際には、以下のような複雑な動作が必要でした。
- ハンドルを握り回す
- ドアを開けると同時にバネの力で閉じないよう支える
- 開いた後にスムーズに通過するための体勢制御
外乱や設計依存の脆弱性
バネ付きの「ドアクローザー」による閉鎖力や、ドアハンドルの構造の違いが操作を困難にした。また、ロボットの構造が障害物に干渉しやすく、タスクを妨げることが多くありました。
学習モデルの限定性
多くの従来技術では、模倣学習や特定のドアに依存したプログラミングが使われ、汎用性に欠けていました。
どのように課題を克服したのか?
ETH Zurichが開発した「ANYmal」に基づく新技術では、これらの課題を次の方法で克服した。
報酬関数の最適化
強化学習における報酬関数を詳細に設計。例えば、ドアのヒンジ角度やハンドルの操作成功に応じた報酬を設定し、安全かつ効果的な動作を促進。
強化学習の活用
ロボットに事前情報(ドアのタイプや構造)を与えずに、強化学習を通じて様々なドア開けタスクを試行錯誤で学習。95%の成功率を達成。
シミュレーションによる効率的な学習(Sim2Real)
物理シミュレータ「Isaac Gym」を活用し、シミュレーション環境で膨大なデータを取得。得られた学習モデルを実機にそのまま適用(実機での再学習は不要)しました。
自己推定機能の実装
ドアが内開きか外開きか、左開きか右開きかをリアルタイムで推定し、それに応じた行動を自律的に切り替える機能を搭載しました。
強化学習とは?
強化学習とは、人工知能(AI)が試行錯誤を通じて最適な行動を学ぶ手法です。具体的には、エージェント(ロボットなど)が環境内で行動を選択し、その結果に基づいて報酬を受け取ります。この報酬を最大化するために、エージェントは行動を調整していきます。強化学習は、特に複雑なタスクや、事前に情報が与えられない状況での学習に強みを持っています。
強化学習をもっとわかりやすく説明すると
「どうすれば得をするか」を、やってみて学ぶ方法です。
エージェント(学ぶもの)が、行動をして報酬(ごほうび)をもらい、その経験をもとに行動を改良していきます。
具体例:ゲームのキャラクター
キャラクター(エージェント)がモンスターを倒すと**コイン(報酬)**をもらえる。
でも強いモンスターに挑むと負けて**マイナス(ペナルティ)**になる。
何度も遊ぶうちに、「弱いモンスターから先に倒してコインをたくさん集めるのがいい」と学ぶ。
つまり、試行錯誤しながら「どうすればうまくいくか」を学んでいく方法が強化学習です!
ANYmalロボットの特長
ANYmalは、4脚で歩行するロボットで、さまざまな環境での移動が可能です。特に、家庭やビルなどの屋内環境での活動が期待されています。従来のロボットが苦手とするドアの開閉を自律的に行えることは、ANYmalの大きな強みです。
自律走行ロボットの技術
ANYmalは、自律走行ロボットの一種であり、環境を認識し、適切な行動を選択できる能力を持っています。これにより、障害物を避けたり、特定のタスクを実行したりすることができます。この技術は、物流、介護、建設など、さまざまな分野での利用が見込まれています。
強化学習によるドア開けの実現
ANYmalは、強化学習を用いてドア開けタスクを自律的に学習しました。具体的には、事前にドアの開き方の情報を与えなくても、学習を通じてドアの種類や開き方を推測し、行動を選択する能力を持っています。実際に、ANYmalは95%の成功率でドアを開けることができるようになりました。
ロボットが日常に溶け込む日も近い
今回のETH Zurichの成果は、ロボットが日常生活でより広範に活躍できる未来を切り開くものです。従来の課題を解決し、どのような環境でも対応可能な汎用性の高さは、多くの分野での応用を可能にします。
私たちの身近な生活に、ロボットが「パートナー」として存在する日も、そう遠くはないかもしれませんね!次回も、ロボット技術の最新情報をお届けしますので、お楽しみに!
参考文献
iCOM技研の取り組み
iCOM技研はSIer事業を行っており、協働ロボットシステムの導入を行っています。弊社は、協働ロボットの販売からソフトウェア開発、ロボットスクールまで行っています
今後の方針としては、ティーチングレス化された協働ロボットシステムを開発し、製造業の人材不足を解消する製品を生み出していく予定です。
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