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【NEC】世界モデルを利用した物流向けロボAI

【NEC】世界モデルを利用した物流向けロボAI

AI 2024.08.05

NECは、不規則な位置の物品を精密にハンドリングできるAI技術を開発しました。この技術は、物品や障害物に隠れた領域を予測し、従来は人手で行われていたハンドリング作業をロボットで代替することが可能です。

今回は、NECの世界モデルを利用した物流ロボットAIについて紹介していきます。

NECの取り組み

背景

近年、人手不足の影響で、物流倉庫や工場では自動化のニーズが高まっています。しかし、既存のロボット技術では、物品や障害物が不規則に配置された環境を正確に認識することが難しいという課題があります。そのため、導入には、ロボットが作業しやすいように環境を整える必要がありました。この制約のため、ロボットの導入は環境が整えやすい、単純で定型的な作業に限られてしまうという背景がありました。

開発した世界モデルAIシステム
https://jpn.nec.com/press/202402/20240219_02.html

詳細

https://www.youtube.com/watch?v=TO7LGWWWrl8&pp=ygUYTkVDIOeJqea1geWQkeOBkeODreODnEFJ

NECは、「世界モデル」を応用し、ロボットが映像データから作業環境や自身の動作結果を高精度に予測する「時空間予測」と、それに基づいて最適かつ精密な動作を自動で生成する「ロボット動作生成」の2つからなるロボットAI技術を開発しました。

世界モデルについてはこちらで詳しく解説しています。

多様な形状の物品に対して精密な動作を最適な順序で自律的に実行

現場でのハンドリング作業は、人手による多様な動作の組み合わせで行われています。例えば、物品の詰め込み作業では、人は「物品を置いて押す」などの精密な動作を、他の物品や障害物を避けつつ瞬時に行うことができます。しかし、従来のロボット制御では「押す」や「引く」などの動作は、「掴む」や「置く」といった動作に比べ、動作や物品の形状のわずかな変化で物品の動きが大きく変わるため、高精度に実行することが難しいとされてきました。さらに、考慮する動作の種類が増えると動作の組み合わせや順序が複雑になり、リアルタイムで計画することも困難でした。

NECの世界モデルによる行動生成
https://jpn.nec.com/press/202402/20240219_02.html

NECの開発した技術では、「世界モデル」を応用して、映像データからロボット動作における多様な物品の動きを高精度に予測するモデルを学習することで、「押す」「引く」などの精密な動作を実行することが可能です。また、作業環境に応じた適切な動作順序を高速に生成することで、「置いて、押す」「引いて、取る」といった複数の動作を自律的かつリアルタイムで実行できます。これにより、物流倉庫でのピッキング作業や物品の移し替え作業をロボットで代替し、生産性の向上を図ることが期待されます

隠れて見えない物品を予測しながら動作

複数の物品が隣接したり重なったりする作業環境では、人は無意識に見えない領域を予測し、物品が崩れないように取り扱ったり、完全に見えない障害物との衝突を避けることができます。しかし、従来のロボット向け認識技術では、隠れた領域を予測するために、大量の教師データを準備し、学習させる必要がありました。これは実用化において大きな障壁となっていました。

NECの世界モデルを使った物体位置予測
https://jpn.nec.com/press/202402/20240219_02.html

NECの技術では、「世界モデル」を応用してラベル付けの不要な教師なし学習を実現し、隠れた物品の形状を効率的に予測するモデルを学習することが可能です。この予測モデルを活用することで、ロボットはカメラに見えない領域も含めて作業環境を正確に予測し、他の物品や障害物との衝突を避けるための最適な動作を自動で生成できます。これにより、複雑な環境下での作業が可能になり、ロボットの実用性が大きく向上します​。

課題と展望

実用化に向けた課題は大きく2つあります。まず1つ目はタクトタイム(作業にかかる時間)です。人間と共に作業する協働ロボットは動作が遅いため、作業効率を向上させるために高速化が求められています。2つ目の課題はタスクの成功率です。実験段階では成功率が9割程度であるものの、実際の現場では失敗が許されないため、失敗した際にリカバリーできる仕組みが必要とされています。

NECは今後、2024年度中に物流倉庫など人手による作業が多く残る現場において本技術の実証を進めていく予定だそうです。

まとめ

NECの事例から、協働ロボットが世界モデルを理解し、動作を自動生成することで、より活躍の場が広がると予測できます。物や設備の位置に関わらず導入できる点は、協働ロボットの柔軟性をさらに引き上げてくれるでしょう。

参考文献

iCOM技研の取り組み

iCOM技研はSIer事業を展開しており、協働ロボットシステムの導入を行っています。弊社は、協働ロボットの販売からソフトウェア開発、ロボットスクールまで行っています。2024年からAI開発にも取り組み始めました。

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