近年、建設業界では熟練技能者の高齢化や若年層の減少により、技能継承と作業の効率化が重要な課題となっています。その中で、鹿島建設は自社の「鹿島スマート生産」ビジョンのもと、建設現場の自動化を推進しています。その内容が鹿島建設のHPに公開されておりました。
そんな鹿島建設が開発した新型マニピュレータ型現場溶接ロボットについて詳しく解説します。

新型溶接ロボットの開発背景
建設業界では、超高層ビルなどの大型鉄骨構造物の建設が増加しており、溶接作業の高度化が求められています。しかし、熟練技能者の減少により、安定した溶接品質の確保が課題となっています。この状況を受け、鹿島建設はロボット技術を活用し、現場での高品質な溶接を実現するための自動化システムを開発しました。
新型マニピュレータ型現場溶接ロボットの概要

鹿島建設の新型溶接ロボットは、以下の3つの主要機能を備えています。
開先センシング機能
本ロボットは、溶接前に開先形状を自動で計測し、そのデータをもとに最適な溶接条件を生成する機能を搭載しています。これにより、溶接部のばらつきに対応し、一貫した品質を保つことができます。
スラグ除去機能
溶接後に発生するスラグ(溶接金属の残留物)を自動で除去する機能を備えており、従来の手作業による除去作業を削減できます。
ツールチェンジャー機能
ロボットは溶接ツールとスラグ除去ツールを自動で交換できるツールチェンジャー機能を搭載しており、連続作業が可能になります。これにより、人手を介さない溶接作業の自動化を実現します。
実導入と成果
この新型溶接ロボットは、横浜市内の建設現場で実証導入されました。実証の結果、熟練技能者と同等以上の高品質な溶接が可能であることが確認されました。また、ロボットによる9時間の連続作業により、生産性の大幅な向上が実現しました。
まとめ
鹿島建設の新型溶接ロボットは、建設業界における溶接作業の自動化を加速させる革新的な技術です。今後、この技術のさらなる発展と普及により、建設現場の生産性向上と技能者不足の解決が期待されます。鹿島建設の「鹿島スマート生産」ビジョンのもと、さらなる技術革新に注目が集まります。
iCOM技研のとりくみ
鹿島建設は「鹿島スマート生産」のコンセプトとして「作業の半分はロボットと」を挙げています。
今回用いられたロボットはダイヘンの産業用ロボットFD-S3ですが、協働ロボットを用いることで、センサーを使わない、省スペースで設置が簡単な簡易型の半自動化溶接ロボットを実現することができます。iCOM技研では溶接用の協働ロボットの自動化システム開発に成功しています。