製造現場で、製品にほこりが付着する、フィルムが貼り付く、部品が正常に搬送されないといった問題はないでしょうか。これらの原因として考えられるのが、摩擦や剥離によって発生する静電気です。
この記事では、静電気を中和するイオナイザーの仕組みや種類、選び方が分かります。除電時間やイオンバランスなど、製品を比較する際に必要な性能指標も解説します。
静電気は目に見えないため、設備の調整不良や材料の品質問題と誤解されることがあります。また、イオナイザーを設置すれば、どのような条件でも除電できるわけではありません。
対象物の材質、搬送速度、設置距離、周囲の気流を確認する必要があります。本記事では、製造現場で起こるトラブルから、設置とメンテナンスの注意点まで解説します。
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イオナイザー(除電器)とは

イオナイザーとは、空気中にプラスとマイナスのイオンを発生させる装置です。帯電した対象物へ反対極性のイオンを届け、表面に残った静電気を中和します。
除電器(イオナイザ)は、正式には「電圧印加式除電器」といいます。主に、アースだけでは静電気を逃がしにくい絶縁体の除電に使用されます。
イオナイザーとアースによる静電気対策の違い
アースとは、帯電した物体を大地へ電気的に接続する対策です。金属などの導体では、電荷がアースを通って移動するため、帯電を抑えられます。
一方、プラスチックやフィルムなどの絶縁体は、電気を通しにくい材料です。アースへ接続しても、表面にある電荷が移動しない場合があります。
イオナイザーは、絶縁体の表面へ正負のイオンを供給します。そのため、アースへ電荷を流せない対象物でも、静電気を中和できます。
ただし、イオナイザーとアースは、どちらか一方を選ぶ対策ではありません。導体はアース、絶縁体はイオナイザーというように、対象物に合わせて使い分けます。
製造現場で起こる主な静電気トラブル

静電気は、目に見える火花だけが問題ではありません。製造現場では、わずかな帯電でも品質不良や搬送停止につながる場合があります。
特に、次のようなトラブルが発生している場合は、静電気が原因の一つとして考えられます。
- 製品や容器にほこり、異物が付着する
- フィルムやシートが貼り付き、巻き込みやシワが起こる
- 小型部品がパーツフィーダ内で詰まる、重なる
- 電子部品が破損し、センサーや設備が誤動作する
- 清掃、手直し、チョコ停、再検査が増える
例えば、樹脂部品やフィルムが帯電すると、周囲の異物を引き寄せます。また、部品同士や設備との間に吸引力が働き、搬送不良を引き起こすことがあります。
電子部品では、人体が感じない静電気放電でも内部回路が損傷する場合があります。そのため、原因が分かりにくい不良や設備停止では、帯電状況を確認することが重要です。
なお、可燃性ガスや粉じんを扱う環境では、静電気放電が着火源になる可能性があります。一般的なイオナイザーだけで対策せず、接地や防爆を含めた安全対策が必要です。
イオナイザー(除電器)が静電気を除去する仕組み

イオナイザーは、正負のイオンを帯電物へ届けて静電気を中和します。イオンとは、プラスまたはマイナスの電気を帯びた粒子です。
静電気を吸い取ったり、風で吹き飛ばしたりする装置ではありません。対象物に偏っている電荷と反対極性のイオンを供給し、電気的なバランスを整えます。
工業用として一般的な電圧印加式イオナイザーでは、電極針のコロナ放電を利用します。ここでは、静電気を中和する原理と、装置の構造を分けて解説します。
イオンによって静電気を中和する原理

物体の静電気は、プラスとマイナスの電荷のバランスが崩れた状態です。どちらか一方の電荷が多くなると、物体が帯電します。
例えば、対象物がマイナスに帯電している場合を考えます。イオナイザーからプラスイオンを供給すると、対象物のマイナス電荷と結び付きます。
反対に、プラスに帯電した対象物には、マイナスイオンが引き寄せられます。その結果、正負の電荷の偏りが小さくなり、中性に近い状態へ戻ります。
つまり、イオナイザーは対象物へ反対極性のイオンを供給する装置です。正イオンと負イオンの両方を発生させるため、どちらの極性に帯電した物体にも対応できます。ただし、除電後の電位が必ず0Vになるわけではありません。正負のイオン量に偏りがあると、対象物に電位が残る場合があります。
この正負のイオン量の均衡を、イオンバランスと呼びます。電子部品などを扱う工程では、除電速度とともに確認すべき性能です。
イオナイザーの構造と仕組み

工業用イオナイザーは、主に電極針、高圧電源、アースで構成されています。電極針の周囲でイオンを発生させ、帯電した対象物へ届ける仕組みです。
まず、高圧電源から電極針へ高電圧を加えます。電極針は先端が細いため、針先へ電気の力が集中します。
すると、針先の周囲でコロナ放電が発生します。コロナ放電とは、強い電界によって空気の一部がイオン化する現象です。
このとき、空気中に正イオンと負イオンが生成されます。これらのイオンが、対象物に残った静電気を中和します。
放電と聞くと、火花が飛ぶ現象を想像するかもしれません。ただし、コロナ放電は一般的な火花放電とは異なります。
通常の使用状態では、目に見える火花を連続して発生させる仕組みではありません。一方で、高電圧を使用するため、分解や改造は避ける必要があります。
発生したイオンは、自然拡散や電界の作用によって周囲へ移動します。製品によっては、ファンや圧縮空気を使って対象物まで運びます。
ファン型は、内蔵ファンの風で広い範囲へイオンを届けます。ノズル型やガン型は、圧縮空気で狭い場所へ集中的に送ります。
帯電した対象物へ反対極性のイオンが届くと、余分な電荷が中和されます。その結果、正負の電荷の偏りが小さくなり、静電気が減少します。
ただし、イオンは空気中で再結合すると中性に戻ります。設置距離が長すぎると、対象物へ届くイオンが減る場合があります。
イオナイザー(除電器)の主な種類

イオナイザーは、本体の形状とイオンの発生方式によって分類できます。対象物の大きさや設置場所、必要な除電範囲に合わせて選ぶことが重要です。
例えば、幅の広いフィルムと装置内の小型部品では、適した形状が異なります。搬送速度や設置距離、周囲の気流も含めて比較してください。
形状によるイオナイザーの違い

選定時は、本体の大きさだけで判断してはいけません。バー型では対象物との距離や搬送速度、ファン型では風向きや軽量部品への影響を確認します。
また、ノズル型やガン型は、エア圧力が高すぎると部品が飛散する場合があります。必要な除電効果を確保しながら、風量や圧力を調整することが重要です。
| 種類 | 主な特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| バー型 | 横長の範囲へ連続してイオンを供給する | フィルム、紙、シート、印刷・包装ライン |
| ファン型 | 内蔵ファンで広い範囲へイオンを送る | 作業台、組立、検査、電子部品 |
| ノズル型 | 圧縮空気で狭い場所を集中的に除電する | 装置内部、パーツフィーダ、小型部品 |
| ガン型 | 手作業で除電と除塵を同時に行う | 成形品、基板、レンズ、容器 |
| オーバーヘッド型 | 作業場所の上方から広範囲を除電する | 電子部品の組立台、検査エリア |
AC方式・DC方式・パルス方式の違い

イオナイザーは、電極針へ高電圧を加える方法によっても分類できます。方式ごとに、正負のイオンを発生させる方法や適した除電距離が異なります。
AC方式: 1本の電極針から、正イオンと負イオンを交互に発生させます。同じ位置から正負のイオンを供給するため、イオンバランスを取りやすい方式です。
高周波AC方式: AC方式より短い周期で、正負のイオンを切り替えます。近距離で細かくイオンを供給し、安定した除電を行いやすい方式です。
DC方式: プラス用とマイナス用の電極を分け、それぞれ一定の極性でイオンを発生させます。比較的遠くまでイオンを届けやすい一方、設置位置によって偏りが生じる場合があります。
パルスDC方式: プラス用とマイナス用の電極を、一定の周期で交互に作動させます。広い範囲や長い距離へイオンを送る用途に使用されます。
パルスAC方式: 1本の電極針へ正負の高電圧を一定周期で加えます。周波数を変更できる製品では、除電距離や対象範囲に合わせた調整が可能です。
ただし、方式名だけで実際の除電性能は決まりません。電極針の構造、設置距離、風量、周囲の気流によって、除電時間やイオンバランスは変化します。
選定時は、実際の対象物や搬送速度を確認してください。カタログを比較する際も、除電時間だけでなく、測定距離や風量などの条件をそろえることが重要です。
イオナイザー(除電器)の性能を判断する指標

イオナイザーを比較する際は、主に次の項目を確認します。
- 除電時間:帯電電圧が下がるまでの時間
- イオンバランス:除電後に残る電位の偏り
- 除電範囲:イオンを届けられる幅や面積
- 風量・エア圧力:イオンを対象物まで運ぶ力
除電時間が短いほど、移動するワークを素早く除電できます。また、イオンバランスが0Vに近いほど、除電後の再帯電を抑えやすくなります。
除電範囲や設置距離は、ワーク全体へ均一にイオンを届けるために重要です。カタログ値を比較する際は、測定距離や風量などの条件も確認してください。
風量やエア圧力を高めると除電しやすくなりますが、ワークの飛散や異物の巻き上げには注意が必要です。
イオナイザー(除電器)の選び方

イオナイザーを選ぶ際は、次の項目を確認します。
- 帯電箇所:静電気が発生する位置
- 対象範囲:ワークの大きさや除電する面積
- 搬送速度:イオンを照射できる時間
- 設置条件:距離、電源、エア配管、清掃スペース
- 管理性能:イオンバランスや監視機能
- 運転コスト:圧縮空気の消費量
まず、工程の上流から表面電位を測定し、静電気が発生する位置を特定します。基本的には、帯電した直後に除電できる場所へ設置します。
形状は、広い範囲にはバー型やファン型、狭い場所にはノズル型、手作業にはガン型が適しています。設置スペースだけでなく、配線や清掃のしやすさも確認してください。
搬送するワークでは、照射時間内に必要な電位まで下げられる性能が必要です。また、電子部品ではイオンバランス、エア式では空気消費量も重要な選定条件になります。
カタログ値だけで判断せず、可能であれば実際のワークと搬送速度で導入前に試験してください。
イオナイザー(除電器)の設置とメンテナンスの注意点

イオナイザーの性能を維持するため、次の点を確認してください。
- 対象物との間に、カバー・部品・フレームなどの遮蔽物を置かない
- メーカー推奨の設置距離と角度を守る
- 空調や設備のエアでイオンが流されていないか確認する
- 設置後は、中央・端部・裏側の表面電位を測定する
- 片側で除電できない場合は、両面からの照射を検討する
- 電極針は定期的に清掃し、必要に応じて交換する
- 清掃・交換は必ず電源を切り、取扱説明書に従って行う
- エア式の場合は、エア圧力の低下にも注意する
- 除電後にローラーやガイドへ接触して再帯電していないか確認する
- 定期測定の結果を導入時と比較し、性能低下を早期に発見する
効果が不十分な場合は、設置位置、距離、遮蔽物、気流、電極針の汚れ、再帯電の有無を順に確認します。
イオナイザー(除電器)の安全性と関連規格
イオナイザーは高電圧を使用するため、取扱説明書に沿った使用が必要です。また、コロナ放電によって、微量のオゾンが発生する製品があります。
性能評価には国際規格が用いられます。ただし、規格上の試験結果だけで、実際の工程における効果や安全性が保証されるわけではありません。
高電圧やオゾンへの安全対策が必要
清掃や電極針の交換は、電源を切った状態で行います。指定外の部品を使用したり、本体を分解したりしてはいけません。
オゾン発生量は、製品ごとに測定条件とともに示されています。狭い場所で複数台を使用する場合は、換気条件も確認してください。
可燃性ガスや可燃性粉じんがある場所では、一般的なイオナイザーを使用できない場合があります。危険場所の区分と製品の対応範囲を確認します。
除電性能の評価にはIEC 61340-4-7などが用いられる
IEC 61340-4-7は、イオナイザーの性能評価方法を定めた国際規格です。現行のIEC 61340-4-7:2025は、2025年8月19日に発行されました。
規格では、イオンバランスを示すオフセット電圧と、電荷を中和する減衰時間の測定方法を定めています。
ただし、規格の試験条件と実際の製造設備は異なります。利用者は、用途に合わせて試験条件を調整し、定期的に性能を確認することが求められます。
また、この規格は、可燃物や爆発物が存在する環境での安全性を対象としていません。危険場所では、別途リスクアセスメントを実施する必要があります。
イオナイザー(除電器)に関するよくある質問

イオナイザーを選ぶ際は、仕組みだけでなく、アースとの違いや設置条件も気になるポイントです。ここでは、導入前や運用時によく検索される疑問を簡潔に解説します。
Q1. イオナイザーとは何ですか?
イオナイザーとは、正イオンと負イオンを発生させ、対象物の静電気を中和する装置です。日本語では「除電器」や「静電気除去装置」と呼ばれます。工業用で一般的なコロナ放電式は、「電圧印加式除電器」に分類されます。
Q2. イオナイザーとアースの違いは何ですか?
アースは、金属などの導体にたまった電荷を大地へ逃がす対策です。一方、イオナイザーは正負のイオンを供給し、樹脂やフィルムなど、アースでは除電しにくい絶縁体の静電気を中和します。
Q3. 湿度を上げればイオナイザーは不要ですか?
湿度を上げると、物体表面の電荷が逃げやすくなり、帯電を抑えられる場合があります。ただし、空調条件や製品品質の都合で加湿できない工程もあります。湿度管理だけで不足する場合は、イオナイザーを併用します。
Q4. イオナイザーを設置すれば静電気を完全に除去できますか?
イオナイザーを使用しても、対象物の電位が必ず0Vになるとは限りません。除電後の残留電位は、イオンバランスや設置距離、風量、周囲の気流、電極針の汚れなどによって変化します。
Q5. イオナイザーは対象物へ近づけるほど効果が高まりますか?
近づけるとイオンを届けやすくなりますが、近すぎると照射範囲が狭くなり、除電むらが生じる場合があります。反対に、遠すぎるとイオンが拡散します。メーカーの推奨距離を基準に調整してください。
Q6. イオナイザーには圧縮空気が必要ですか?
すべてのイオナイザーに圧縮空気が必要なわけではありません。ファン型は内蔵ファンでイオンを運びます。一方、ノズル型やガン型は、狭い場所へイオンを送るために圧縮空気を使用する製品が一般的です。
Q7. イオナイザーの効果はどのように確認しますか?
対象物の表面電位を、静電気測定器で除電前後に測定します。また、イオナイザー単体の性能確認には、チャージプレートモニタを使用します。除電時間やイオンバランスを定期的に確認することが重要です。
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