日立 Lumadaとは?|3.0への進化・構成要素・活用事例を解説

日立 Lumadaとは?|3.0への進化・構成要素・活用事例を解説

AI 2026.08.06

日立は2026年5月、米国のAI企業Anthropicとの戦略的パートナーシップを発表しました。この協業では、AnthropicのAIモデル「Claude」と、日立が社会インフラ分野で蓄積してきた知見を組み合わせます。目的は、日立の事業モデルである「Lumada 3.0」を強化することです。

Lumadaは、特定のAI製品やIoTシステムを指す名称ではありません。現場や業務からデータを集め、デジタル技術やAIによって価値へ変える、日立の事業モデルです。

本記事では、日立 Lumadaとは何かを中心に、構成要素やこれまでの進化、活用事例を解説します。

Lumada 3.0を強化する日立とAnthropicの協業

Lumada 3.0を強化する日立とAnthropicの協業

今回の協業は、Lumadaがデータを収集・分析する仕組みから、AIを現場や社会インフラへ実装する事業モデルへ進化していることを示しています。

AnthropicのAIモデル「Claude」と、日立が製造、鉄道、エネルギーなどで蓄積してきた現場知識を組み合わせ、システム開発、設備管理、保守、セキュリティなどへの活用を進めます。

具体的な展開先の一つが、社会インフラ向けソリューション群「HMAX」です。設備や運用に関するデータへClaudeの推論能力を加え、設備状態の把握や保守計画の作成、異常原因や対応方法の整理を支援します。

これまでのLumadaは、現場データの収集や可視化、分析を通じて業務改善につなげてきました。Lumada 3.0では、そこへAIによる推論や業務支援を加え、分析結果を実際の判断や行動へ結び付けます。

日立とAnthropicの協業は、日立の現場知識とClaudeを組み合わせ、社会インフラの運用や保守を支えるAIの実装を具体化する取り組みです。

日立 Lumadaとは

日立 Lumadaとは

Lumadaは、データとデジタル技術を活用し、顧客の業務や事業を変革する日立の事業モデルです。名称は「Illuminate」と「Data」に由来します。顧客が保有するデータに光を当て、新しい知見や価値を引き出すという意味が込められています。

Lumadaは、一つのソフトウェア製品ではありません。AI、IoT、データ分析、システム構築、設備、保守サービスなどを、顧客の課題に合わせて組み合わせる仕組みです。例えば、製造業では次のようなデータを扱います。

  • 設備の稼働状況
  • 生産計画と実績
  • 品質検査の結果
  • 在庫や物流の情報
  • 故障履歴や保守記録
  • 電力やエネルギーの使用量

これらを個別に管理するだけでは、工場全体の改善につながりません。

Lumadaでは、複数の設備やシステムからデータを集め、分析やシミュレーションを行います。その結果を、生産計画、保全、品質管理、設備運用へ戻すことで、継続的な改善につなげます。

Lumadaの産まれた背景

Lumadaが誕生した背景には、日立自身の事業改革とIoTの普及があります。

日立は、幅広い事業や組織を横断して社会課題を解決する「社会イノベーション企業」への転換を進めました。その中で、鉄道、電力、産業設備などで蓄積したOTと、ITを結び付ける仕組みが必要になりました。OTとは、設備の制御や運転、保守に関する技術です。

一方、ITは、生産管理、在庫管理、販売管理などの情報を扱います。従来は、OTとITが別々に管理されるケースが多く、現場データを経営や事業改善へ十分に活用できないことが課題でした。

そこで日立は2016年、OTとITを融合するIoTプラットフォームとしてLumadaの提供を開始しました。初期のLumadaは、データの統合、分析、シミュレーションなどを通じて、生産性や安全性の向上、プロセスの最適化を支援する仕組みでした。

日立 Lumadaの構成要素

日立 Lumadaの構成要素

現在のLumadaは、企画からシステム構築、設備の接続、導入後の運用までを一つのサイクルとして扱います。

単にデータを分析するだけではありません。分析結果を実際の業務や設備運用へ反映し、さらに新しいデータを集めて改善を続けます。

Lumadaを構成する4つの事業要素

Lumadaの事業は、主に次の4要素で構成されます。

デジタルエンジニアリング顧客課題の整理、サービス設計、データ分析、AI開発などを行う
システムインテグレーションIT、OT、既存設備、業務システムを接続し、全体の仕組みを構築する
コネクテッドプロダクトセンサーや通信機能を備えた設備・製品からデータを収集する
マネージドサービスシステムの監視、保守、改善、AIモデルの運用などを継続的に行う

デジタルエンジニアリングでは、何を改善するかを整理します。続いて、システムインテグレーションによって、必要なシステムや設備を接続します。コネクテッドプロダクトからデータを収集し、導入後はマネージドサービスによって運用と改善を続けます。

この循環により、構想だけで終わらず、実際の設備や業務まで変革できる仕組みを目指しています。

Lumadaを支えるエコシステム

Lumadaでは、日立だけですべての技術を提供するのではなく、顧客やパートナーとの協創を重視しています。その中心となる仕組みが、次の3つです。

Lumada Innovation Hub Tokyo
顧客、パートナー、日立の専門家が集まり、課題の整理やアイデアの検討を行う協創拠点です。
ワークショップ、ソリューション体験、プロトタイピングなどを通じて、構想を具体的なシステムへ落とし込みます。

Lumada Solution Hub
日立が過去のプロジェクトで蓄積したユースケース、システム構成、製品、サービスなどを共有する仕組みです。
既存の技術や知見を再利用することで、開発期間の短縮や品質の安定化につなげます。

Lumada Alliance Program
異なる技術や業界知識を持つ企業が参加するパートナー制度です。
一社では解決が難しい課題に対し、複数企業の技術やノウハウを組み合わせます。そこで生まれた成果を再び共有し、新しい案件へ活用する循環を構築します。
さらに、GlobalLogicやHitachi Digital Servicesが、設計、ソフトウェア開発、クラウド、運用などを支えます。
AnthropicをはじめとするAI企業やクラウド事業者との協業も、このエコシステムの一部です。

日立 Lumada 1.0から3.0までの進化

日立 Lumada 1.0から3.0までの進化

Lumadaは、データやデジタル技術を活用し、顧客や社会の課題を解決する事業モデルです。特定の製品を指す名称ではありません。社会インフラの知見やAIなどを組み合わせ、継続的に価値を生み出す仕組みです。

Lumada 1.0では、現場データの収集と可視化が中心でした。続く2.0では、データ活用の対象が複数の業務や事業へ広がりました。そして現在のLumada 3.0では、AIを業務や社会インフラへ実装します。さらに、業務改善を事業成長や社会課題の解決へつなげています。

AIを業務や社会インフラへ組み込む

Lumada 3.0の特徴は、生成AIを含むAI技術を、実際の業務へ組み込むことです。Lumada 1.0では、設備データを収集し、稼働状況や異常を可視化していました。一方、Lumada 2.0では、収集したデータを分析し、設備保全や生産計画の改善へ活用しました。ただし、分析後の判断は人に委ねられる部分も残っていました。

これに対し、Lumada 3.0では、AIが判断や業務の実行まで支援します。例えば、保守手順の提示や計画の作成、社内情報の検索などです。つまり、データ分析だけでなく、業務プロセスそのものへAIを組み込みます。日立とAnthropicの協業も、この方向性を示しています。日立の業界知識とClaudeを組み合わせ、専門性の高い業務への活用を目指しています。

デジタル化から事業変革へ対象を広げる

Lumada 3.0では、個別業務の効率化だけでなく、事業全体の変革を重視しています。Lumada 1.0では、設備の稼働率向上など、現場単位の課題解決が中心でした。その後、Lumada 2.0では、複数の工場や部門へ活用範囲を拡大しました。異なるシステムやデータをつなぎ、企業全体の改善へ生かす段階です。さらに、Lumada 3.0では、新サービスの開発や事業モデルの転換も対象とします。

既存業務をそのままデジタル化するのではありません。AIやデータを前提として、業務やサービスを再設計します。そのため、情報システム部門だけの取り組みではありません。経営課題や事業戦略と結び付け、どのような価値を生むかが重要です。

ITと現場設備を一体で変革する

Lumada 3.0では、ITシステムと現場設備を一体で扱います。Lumada 1.0では、IoTを使って設備データを集め、システム上で可視化していました。続くLumada 2.0では、設備データと受注、生産、在庫などの業務データを連携しました。これにより、部門を越えた改善が可能になりました。そしてLumada 3.0では、AIの分析結果を保全や生産などの業務へ反映します。

例えば、異常を検知するだけでなく、保全作業の優先順位を示します。また、設備状態に応じた生産条件の変更も支援します。このように、分析と実行をつなぐ点が大きな特徴です。また、ITと現場設備の両方を扱う日立の知見も活用されます。

複数の企業や事業をつなぐ

Lumada 3.0では、外部企業との連携も重視されています。Lumada 1.0では、日立の技術や事例を使い、顧客ごとの課題を解決する形が中心でした。一方、Lumada 2.0では、成功事例や技術を再利用する仕組みが整備されました。また、顧客と共同で解決策を設計する協創も進みました。さらにLumada 3.0では、AI企業やクラウド事業者などとの連携を広げています。

日立だけですべてを提供するのではありません。外部の技術と日立の業界知識を組み合わせ、用途別のサービスを構築します。Anthropicとの協業も、その代表例です。汎用的なAIを、製造や社会インフラで使える業務向けAIへ発展させます。

社会課題の解決と事業成長を両立する

Lumada 3.0では、業務改善と事業成長に加え、社会課題の解決も重視しています。Lumada 1.0では、設備停止の削減や作業時間の短縮などが中心でした。続くLumada 2.0では、企業全体の生産性向上や、新しいサービスの開発へ目的が広がりました。そしてLumada 3.0では、人手不足や脱炭素、インフラの老朽化なども対象とします。

例えば、AIで熟練者の知識を整理すれば、保守技術の継承を支援できます。また、設備データと需要予測を組み合わせれば、エネルギー使用量の最適化にもつながります。

つまり、Lumada 3.0は、1.0のデータ基盤と2.0の企業横断型DXを引き継ぐモデルです。そのうえでAIと業界知識を組み合わせ、業務だけでなく、事業や社会の仕組みまで変革しようとしています。

日立 Lumadaの活用事例

Lumada 活用事例

Lumadaは、製造業、鉄道、エネルギー、公共、金融などで活用されています。

ここでは、Lumada 3.0の特徴が表れやすい三つの分野を紹介します。

製造業|事業所の生産最適化

日立の大みか事業所(茨城県日立市)では、設計、製造、試験、保守などのデータを活用し、バリューチェーン全体の最適化を進めています。

製造現場では、人、設備、材料、作業方法に関するデータを収集します。これらを分析し、生産状況の見える化、熟練者の暗黙知のモデル化、生産計画への実績反映などを行いました。その結果、代表製品では生産リードタイムを50%短縮したと公表されています。

近年は、生産工程への生成AI活用も進めています。作業支援、品質向上、技能伝承などにAIを使い、従来のデータ活用からAIを含む継続的な改善へ移行しています。

鉄道|車両や設備の保守・運用支援

鉄道では、車両、信号、線路、運行システムなどから大量のデータが発生します。Lumada 3.0では、これらの稼働データを収集し、車両や鉄道インフラの状態を分析します。

異常の予兆を早期に把握できれば、故障してから修理する方法から、状態に応じて保守する方法へ移行できます。HMAXでは、車両側にエッジコンピューティング環境を搭載し、データを現場に近い場所で処理する取り組みも進めています。これにより、クラウドへ送ってから分析する場合よりも、迅速に異常へ対応できます。

日立は、鉄道向けHMAXによって、保守コストを15%低減し、列車遅延を20%削減する価値を示しています。ただし、これらはすべての鉄道事業者で一律に得られる数値ではありません。対象設備や運用条件によって効果は異なります。

エネルギー|設備運用の高度化

エネルギー分野では、発電設備、変圧器、送配電網、蓄電池などを安定して運用する必要があります。一方で、設備の老朽化、電力需要の増加、再生可能エネルギーの変動などに対応しなければなりません。

日立は2026年、エネルギーインフラ向けのAIサービス・ソリューション群「HMAX Energy」の提供を開始しました。HMAX Energyでは、設備データや保守履歴を分析し、設備寿命の延長、運用効率の向上、電力系統の信頼性強化を支援します。主な考え方は、次の三つです。

  • Plan:設備更新、運転、電力需給などを計画する
  • Predict:故障、需要、設備状態などを予測する
  • Prevent:異常や停止が発生する前に対策する

従来は、一定期間ごとに設備を点検する方法が中心でした。Lumada 3.0では、センサーや運転データから設備の状態を把握します。必要な時期に保守を行うことで、不要な点検を減らしながら、突発停止の防止を目指します。

日立 Lumadaに関するよくある質問

超音波探傷に関するよくある質問

Q1.Lumadaはソフトウェア製品ですか?

Lumadaは、単一のソフトウェア製品ではありません。

デジタル技術、AI、IoT機器、システム開発、設備、運用サービスなどを組み合わせた、日立の事業モデルです。

Q2.Lumada 3.0とHMAXの違いは何ですか?

Lumada 3.0は、日立のデータ・AI事業全体を示す考え方です。

HMAXは、その考え方を鉄道、エネルギー、製造などへ実装するソリューション群です。

Q3.Lumada 1.0や2.0は使われなくなったのですか?

1.0や2.0の機能がなくなったわけではありません。

IoTによるデータ収集はLumada 1.0から、デジタルエンジニアリングはLumada 2.0から引き継がれています。Lumada 3.0は、これらへAIとドメインナレッジを加えたものです。

Q4.他社製の設備やシステムとも連携できますか?

Lumadaは、既存システムや複数メーカーの設備を組み合わせることを前提としています。

ただし、実際に接続できるデータや通信方式は、対象設備によって異なります。導入前に、PLC、センサー、MES、ERPなどの接続方法を確認する必要があります。

Q5.LumadaとフィジカルAIにはどのような関係がありますか?

Lumada 3.0は、設備やシステムからデータを集め、AIの判断を実際の運用へつなげます。

このため、設備、ロボット、交通、電力など、現実世界へ作用するフィジカルAIの実装基盤として活用されます。

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