TriOrbとは?球駆動式AMR「TriOrb BASE」の特徴・仕組み・用途を解説

TriOrbとは?球駆動式AMR「TriOrb BASE」の特徴・仕組み・用途を解説

お役立ち情報 2026.08.18

製造現場では、部品や材料を工程間で運ぶために、AGVやAMRが活用されています。

しかし、既設工場では通路が狭く、一般的なAMRを導入しにくい場合があります。床に溝や段差があり、走行経路を確保するために、設備配置や床面の改修が必要になるケースもあります。

こうした搬送課題に対して、独自の球駆動技術を開発している企業が「TriOrb」です。

TriOrbは、車輪ではなく球体を使って移動する「TriOrb BASE」を開発しています。前後左右だけでなく、斜め方向にも機体の向きを変えずに移動できる点が特徴です。

本記事では、TriOrbとはどのような企業なのかを解説します。あわせて、TriOrb BASEの仕組みや特徴、用途、導入事例についても紹介します。

TriOrbとは

TriOrbとは

TriOrb(トライオーブ)は、福岡県北九州市に本社を置くロボティクス企業です。2023年2月に設立され、九州工業大学発、AIST Solutions認定のスタートアップとして事業を展開しています。

基礎となる研究は九州工業大学で進められ、2008年には関連技術の特許が出願されました。2012年には、球体駆動式全方向移動機構に関する研究論文も発表されています。

会社としての歴史は新しい一方で、コアとなる移動技術は長期間にわたり研究されてきた点が特徴です。

主に開発しているのが、球駆動式の全方向移動プラットフォーム「TriOrb BASE」です。

TriOrb BASEは、単に荷物を運ぶAMRとして使うだけではありません。ロボットアームや各種設備を搭載し、移動可能なロボットシステムの基盤として活用することも想定されています。

TriOrb BASEとは

TriOrb BASEとは

TriOrb BASEは、球体を利用して360°全方向へ移動できるモビリティプラットフォームです。

一般的な搬送ロボットでは、タイヤやキャスターを使って走行します。一方、TriOrb BASEでは、床面に接する3個の球体を駆動して機体を移動させます。

この構造により、前後左右だけでなく、斜め移動やその場での回転にも対応できます。進みたい方向へ移動するために、あらかじめ機体の向きを変える必要がありません。

そのため、旋回スペースを確保しにくい狭い場所でも、細かな位置調整を行いやすくなります。

また、TriOrb BASEは搬送台車としてだけでなく、ロボットアームや治具を搭載する移動基盤としても利用できます。

TriOrb BASEの仕組み

TriOrb BASEの仕組み

TriOrb BASEでは、床面に接する3個の球体を三角形状に配置しています。それぞれの球体を制御することで、機体の移動方向と回転を組み合わせます。

例えば、機体の向きを保ったまま横方向へ移動したり、斜め方向へ進んだりできます。その場で機体だけを回転させることも可能です。

このように、進行方向と機体の向きを独立して制御できる移動方式を「ホロノミック移動」と呼びます。

一般的な差動二輪型AMRでは、左右の車輪速度を変えて旋回します。そのため、方向転換には一定のスペースが必要です。

一方、TriOrb BASEは切り返しを抑えながら進行方向を変えられます。設備間の狭い通路でも、搬送経路を設計しやすくなる点が特徴です。

さらに、球体が床面と接触する構造を生かし、溝や小さな段差を含む床面への対応も図られています。

一般的なAMRとの違い

TriOrb BASEの特徴は、単に全方向へ移動できることだけではありません。

既設工場で見られるグレーチングやレール溝、小さな段差などを含む床面への対応も特徴の一つです。

一般的なAMRでは、比較的平滑な床面を前提としている機種もあります。そのため、導入にあたって床面の改修や、設備配置の変更が必要になる場合があります。

TriOrb BASEでは、こうした既設環境への導入を想定した設計が行われています。設備配置を大きく変えにくい工場でも、導入を検討しやすい点が特徴です。

比較項目一般的なAMRTriOrb BASE
主な駆動方式車輪球体
横移動機種による可能
斜め移動機種による可能
その場旋回対応機種あり可能
切り返し必要になる場合あり抑えやすい
狭所への対応旋回半径に左右される比較的対応しやすい
小段差・溝機種による対応を想定
高精度位置決め機種による繰返し停止精度±5mm

なお、メカナムホイールを使用したAMRも全方向へ移動できます。

メカナムホイールは、車輪の外周に複数のローラーを配置して全方向移動を実現します。一方、TriOrb BASEは球体そのものを駆動して移動する点が異なります。

TriOrb BASEの主な特徴

TriOrb BASEの主な特徴

360°全方向へ移動できる

TriOrb BASEは、機体の向きを維持したまま横方向や斜め方向へ移動できます。

そのため、設備が密集した場所でも位置を調整しやすく、旋回スペースを十分に確保できない既設工場でメリットを生かしやすくなります。

また、ワークの向きを変えずに横移動できるため、長尺物や向きを変えにくい部品を搬送する場合にも活用できます。

狭い通路へ導入しやすい

標準モデルの本体寸法は494×494mmで、最小通路幅は700mmとされています。

小型の本体と全方向移動を組み合わせることで、限られたスペースでも搬送経路を構築できます。

既存設備の配置を大きく変更できない場合でも、AMRを後付けできる可能性があります。

溝や段差を走行できる

標準モデルでは、45mmの溝と10mmの段差への対応が示されています。最大9.5°の勾配にも対応します。

工場内には、レール溝やグレーチング、設備間のわずかな段差などがあります。こうした場所を走行できれば、AMR導入のための床面改修を抑えられる可能性があります。

ただし、すべての床面を走行できるわけではありません。段差の形状や床材、積載重量によって走行条件は変わるため、導入前には実際の現場で確認する必要があります。

高精度な位置決めに対応する

TriOrb BASEの繰返し停止精度は±5mmです。また、カメラを使ったVisual SLAMによる自律走行にも対応しています。

Visual SLAMとは、カメラ画像から周囲の地図を作成しながら、自分の位置を推定する技術です。

高精度に停止できれば、単なる工程間搬送だけでなく、加工機や作業台へのワーク供給にも利用しやすくなります。

特にロボットアームを搭載する場合は、設備へ正確に接近する必要があるため、移動台車側の停止精度も重要になります。

PLCやROS 2と連携できる

TriOrb BASEは、ROS 2、MQTT、Web APIなどに対応しています。Pythonから制御するためのAPIも公開されています。

さらに2026年には、キーエンス製PLC「KV-X500シリーズ」への標準対応が発表されました。

HTTP/REST APIを利用することで、中継PCを介さずにPLCから搬送指示を送ることができます。

製造ラインへAMRを組み込む場合は、既存のPLCや上位システムと連携できるかどうかも重要な選定ポイントになります。

TriOrb BASEのラインナップ

TriOrb BASEでは、主に標準モデルと重量可搬モデルが展開されています。搬送するワークの重量や設備条件に合わせて選定します。

標準モデル

標準モデルは、コンパクトな機体で最大300kgの搬送に対応するモデルです。

主な仕様は以下の通りです。

項目仕様
本体寸法494×494×148mm
本体重量32kg ※電池除く
可搬重量300kg
最大並進速度0.65m/s
最大回転速度0.6rad/s
繰返し停止精度±5mm
最小通路幅700mm
対応する溝45mm
対応する段差10mm
最大勾配9.5°

工程間搬送や部品供給、台車搬送などへの利用が考えられます。

重量可搬モデル

重量可搬モデルは、最大1,000kgの搬送に対応したモデルです。

項目仕様
本体寸法999×1,016×350mm
本体重量295kg
可搬重量1,000kg
最大並進速度0.54m/s
繰返し停止精度±5mm
最小通路幅1,200mm
連続稼働時間約5時間
充電時間約1.5時間

大型部品や重量物を搬送する用途に利用できます。

また、複数台を協調させることで、1台では扱いにくい長尺物を運ぶ技術開発も進められています。

TriOrb BASEの主な用途

TriOrb BASEは、製造現場を中心にさまざまな搬送や自動化へ活用できます。

代表的な用途は、加工機や組立工程の間で部品を運ぶ工程間搬送です。全方向へ移動できるため、旋回スペースを確保しにくい既設工場でも搬送経路を設計しやすくなります。

重量可搬モデルでは、最大1,000kgの搬送に対応します。そのため、人が台車で運ぶことが難しい大型部品や重量物の搬送にも利用できます。

また、複数台のTriOrb BASEを同期させることで、1台では扱いにくい長尺物を運ぶ協調搬送にも対応します。公式情報では、自律走行による2台協調が実装されています。

さらに、TriOrb BASEの上にロボットアームを搭載し、モバイルマニピュレータとして使用することもできます。ロボットを必要な設備まで移動させることで、ワーク供給、取り出し、機械への着脱、検査などを自動化できます。

主な用途を整理すると、次の通りです。

用途主な活用方法
工程間搬送部品や材料を加工・組立工程の間で搬送する
重量物搬送大型部品や重量物を自動搬送する
長尺物搬送複数台を協調させて長尺ワークを搬送する
モバイルマニピュレータロボットアームを設備間で移動させる
設備へのワーク供給加工機や作業台の近くまでワークを搬送する
建設資材搬送段差や溝を含む環境で資材を搬送する

特に、狭い通路や設備が密集した工場では、球駆動による全方向移動を生かしやすくなります。

TriOrb BASEを導入するメリット

TriOrb BASEを導入するメリット

TriOrb BASEのメリットは、単純な搬送速度だけではありません。

特に、既設設備を変更しにくい工場では、全方向移動や床面への対応力を生かせる可能性があります。

一般的なAMRを導入する場合、床面を平滑化したり、旋回スペースを確保したりする必要が生じることがあります。場合によっては、設備配置そのものを変更しなければなりません。

TriOrb BASEで既存の床面やレイアウトを活用できれば、こうした周辺工事や設備変更を抑えられる可能性があります。

また、ロボットアームと組み合わせれば、固定式ロボットとは異なる自動化も検討できます。

1台のロボットを複数工程へ移動させることで、設備ごとにロボットを設置せずに自動化できる可能性があります。

生産品種や設備配置が変わる現場では、こうした柔軟性もメリットになります。

TriOrb BASE導入時の注意点

AMR導入時の注意点

TriOrb BASEは特徴的な移動性能を持っていますが、導入前には使用環境や運用条件を確認する必要があります。

水や油への対応を確認する

標準モデルは屋内での使用を前提としています。

公式仕様では、水や油で濡れた環境は使用条件に含まれていません。

切削液や油が床面に付着する加工現場では、実際の床面で走行できるか確認する必要があります。

また、粉塵や床面の凹凸などについても、現場条件に合わせて検証することが重要です。

安全システムは設備全体で考える

標準モデルでは、安全センサが標準搭載ではありません。

人とAMRが同じ空間で作業する場合は、安全LiDARや非常停止、速度制御などを含めた安全設計が必要です。

走行速度や停止距離、人が立ち入る範囲も確認しながら、設備全体でリスクアセスメントを行う必要があります。

長時間運用では保守体制を確認する

24時間稼働する製造ラインでは、故障時の復旧時間も重要です。

予備機の有無や保守契約、交換部品の供給体制まで確認しておく必要があります。

特に球体やベルトなどの消耗部品については、交換方法や交換周期を確認しておくと運用計画を立てやすくなります。

実際のワークと床面で検証する

カタログに記載された段差や溝への対応値だけで、導入可否を判断することはできません。

積載するワークの重量や重心、床面の材質、溝の方向などによって走行状態は変わります。

そのため、本導入前には実際のワークと床面を使用したPoCや走行テストを行うことが重要です。

TriOrbに関するよくある質問

TriOrbに関するよくある質問

Q1. TriOrbとはどのような会社ですか?

TriOrbは、福岡県北九州市に本社を置くロボティクス企業です。2023年2月に設立され、九州工業大学で研究された球駆動技術を基盤として、全方向移動プラットフォーム「TriOrb BASE」を開発しています。

搬送用AMRだけでなく、重量物搬送やモバイルマニピュレータ、協調搬送などへの展開も進めています。

Q2. TriOrb BASEとは何ですか?

TriOrb BASEは、3個の球体を利用して360°全方向へ移動するモビリティプラットフォームです。前後左右だけでなく、斜め移動やその場旋回にも対応します。

一般的な車輪式AMRとは異なり、機体の向きを維持したまま横方向へ移動できる点が特徴です。

Q3. TriOrb BASEと一般的なAMRの違いは何ですか?

大きな違いは、球体を使った全方向移動機構です。

一般的な差動二輪型AMRでは、進行方向を変えるために旋回や切り返しが必要になる場合があります。

TriOrb BASEでは、機体の向きを維持したまま横や斜めへ移動できます。そのため、旋回スペースを確保しにくい既設工場でも導入を検討しやすくなります。

Q4. TriOrb BASEはどのくらいの重量を搬送できますか?

標準モデルの可搬重量は最大300kgです。重量可搬モデルでは、最大1,000kgまで対応しています。

部品や材料の工程間搬送だけでなく、大型部品や重量物の搬送にも利用できます。

Q5. TriOrb BASEは段差や溝を走行できますか?

標準モデルでは、45mmの溝と10mmの段差への対応が示されています。また、最大9.5°の勾配にも対応します。

ただし、床材や段差形状、積載重量によって走行条件は変わります。導入前には、実際の床面とワークを使って走行テストを行うことが重要です。

Q6. TriOrb BASEは自律走行できますか?

TriOrb BASEは、Visual SLAMを利用した自律走行に対応しています。

Visual SLAMでは、カメラ画像から周囲の地図を作成しながら、自分の位置を推定します。

ROS 2やMQTT、Web APIなどにも対応しており、上位システムや生産設備との連携も可能です。

Q7. TriOrb BASEにロボットアームを搭載できますか?

TriOrb BASEは、ロボットアームを搭載する移動プラットフォームとしても利用できます。

スギノマシンでは、TriOrb BASEとFANUC製協働ロボットを組み合わせたモバイルマニピュレータ「CMR-3Dシリーズ」を展開しています。

ロボットを複数設備へ移動させることで、ワーク供給や取り出し、機械への着脱などを自動化できます。

Q8. TriOrb BASEは水や油がある工場でも使用できますか?

標準モデルは屋内環境での使用を前提としています。

水や油で濡れた床は、標準的な使用条件には含まれていません。

切削液や油が付着する現場では、導入前に実際の床面で走行可否を確認する必要があります。

Q9. TriOrb BASEを導入する際の注意点はありますか?

床面条件、安全設備、連続稼働時間、保守体制などを事前に確認する必要があります。

特に、人とAMRが同じ空間で作業する場合は、安全LiDARや非常停止などを含めた安全設計が重要です。

また、製品単体の性能だけでなく、既存設備やPLC、上位システムとの連携まで含めて検討する必要があります。

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