製薬業界では、製造や品質管理にMES、LIMS、分析装置、電子記録システムなど、さまざまなコンピューター化システムが利用されています。
こうしたシステムが製品品質やGMP上のデータに関わる場合、要求した機能を備え、意図した用途に使用できることを確認し、その状態を継続して維持する必要があります。
このために行われるのが、コンピューター化システムバリデーション(CSV)です。
本記事では、コンピューター化システムバリデーション(CSV)とは何かを解説します。あわせて、CSVの目的や対象、GAMP 5との関係、基本的な進め方、DQ・IQ・OQ・PQ、運用管理まで分かりやすく説明します。
目次[]
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)とは
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)の対象
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)とGAMP 5
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)はライフサイクル全体で管理する
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)の基本的な進め方
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)におけるDQ・IQ・OQ・PQ
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)のリスクベースアプローチ
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)の運用管理
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)における廃棄
- コンピューター化システムバリデーション(CSV)を進める際のポイント
- コンピューター化システムバリデーションに関するよくある質問
- iCOM技研による導入サポート|CSVパレタイザー導入の「壁」を取り除く
コンピューター化システムバリデーション(CSV)とは

コンピューター化システムバリデーションとは、コンピューター化システムが要求仕様を満たし、意図した用途に使用できることを確認し、その結果を文書化する活動です。
英語の「Computerized System Validation」の頭文字から、一般的に「CSV」と呼ばれています。
厚生労働省の「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」では、GQP・GMPに関する業務で使用するコンピューター化システムについて、開発、検証、運用管理、廃棄までを適切に管理する考え方が示されています。
ここで重要なのは、CSVが完成したソフトウェアだけを確認する活動ではないことです。
システムに何を求めるのかを明確にし、その要求が設計へ反映され、実際の運用で正しく機能することまで確認します。また、システム導入後も変更や障害を管理し、バリデートされた状態を維持します。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)の目的

CSVの主な目的は、コンピューター化システムを適切に管理し、医薬品の品質や患者の安全、データの信頼性を確保することです。
製薬業界では、製造記録や試験結果など、多くの情報が電子データとして扱われます。こうしたデータに誤記録や不適切な変更が生じると、品質判定や製造管理へ影響する可能性があります。
そのためCSVでは、システムが要求どおりに機能することに加え、データを正確に記録・保存できること、アクセス権限を適切に管理できること、変更履歴を追跡できることなどを確認します。これらは、データインテグリティを確保するうえでも重要な要素です。
また、CSVは規制やガイドラインを踏まえて実施します。日本では厚生労働省の「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」があり、国際的にはGAMP 5などが広く参照されています。
近年では、クラウドサービスやSaaSを利用するシステムも増えています。そのため、自社内のハードウェアやソフトウェアだけでなく、外部サービスや供給者を含めたシステム全体を対象として、リスクに応じた管理や検証を行うことが重要です。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)の対象
CSVの対象は、製造管理や品質管理などに使用され、製品品質やGMP上のデータに影響するコンピューター化システムです。
代表的なものとして、MES、LIMS、分析装置、SCADA、PLC・HMIを含む制御システム、電子文書管理システムなどがあります。
| システム | 主な用途 |
|---|---|
| MES | 製造指示、製造実績、製造記録の管理 |
| LIMS | 試験結果、分析データの管理 |
| 分析装置 | 測定、解析、試験データの保存 |
| SCADA | 製造条件やプロセスデータの監視・記録 |
| PLC・HMI | 製造設備の制御、設定、記録 |
| 電子文書管理システム | SOPや品質文書の作成・承認・保存 |
ただし、コンピューターを使用しているという理由だけで、すべてのシステムに同じCSVを実施するわけではありません。
システムの用途や複雑さ、製品品質やデータへの影響を評価し、その結果に応じて検証する範囲や内容を決めます。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)におけるシステムアセスメント

CSVの対象や検証範囲を決めるために行うのが、システムアセスメントです。
システムの用途や複雑さ、製品品質への影響、扱う電子記録の重要度、供給者の品質保証状況などを確認します。
例えば、製造条件を自動制御するシステムと、参考情報を表示するだけのシステムでは、不具合が発生した場合の影響が異なります。
そのため、システムアセスメントの結果をもとに、必要な検証内容や作成する文書を決めます。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)とGAMP 5

CSVを進める際に広く参照されているのが「GAMP」です。
GAMPは「Good Automated Manufacturing Practice」の略で、ISPE(国際製薬技術協会)が発行するGxPコンピューター化システムの実践ガイドです。現在は、2022年に発行された「GAMP 5 Second Edition」が最新版です。
GAMP 5は法令ではありませんが、コンピューター化システムの計画から検証、運用、廃棄までを管理する考え方が体系的に整理されています。
また、すべてのシステムに同じ量の文書や試験を求めるのではなく、製品品質、患者安全、データの信頼性への影響を評価し、リスクに応じて検証内容を決める考え方が重視されています。
そのためCSVでは、GAMP 5などを参考にしながら、対象となるシステムの用途やリスクに応じた検証を計画します。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)はライフサイクル全体で管理する
CSVは、完成したシステムを最後にテストするだけの活動ではありません。
システムに必要な機能を決める段階から、設計・構築、検証、運用、廃棄までを一つのライフサイクルとして管理します。
基本的な流れは次のとおりです。

最初に必要な機能や性能を要求仕様として明確にし、その要求をもとにシステムを設計・構築します。完成後は、要求どおりに機能することを試験によって確認します。
運用開始後も、アクセス権限、バックアップ、変更、障害などを継続して管理します。システムを廃棄する際には、必要なデータや記録を適切に保存・移行します。
このように、CSVではシステムの導入から廃棄までを通して、バリデートされた状態を維持することが重要です。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)の基本的な進め方

CSVでは、システム完成後にまとめて確認するのではなく、要求を決める段階から計画的に進めます。
基本的には、要求仕様を定め、リスクを評価したうえで設計・構築を行い、完成したシステムを検証します。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)におけるURS
CSVの出発点となるのが、システムに何を求めるのかを明確にすることです。
この要求をまとめた文書がURSです。URSは「User Requirements Specification」の略で、日本語ではユーザー要求仕様書などと呼ばれます。
例えば、「管理者のみ設定値を変更できる」「製造記録を保存できる」「バックアップしたデータを復旧できる」といった要求を定めます。
URSは、その後の設計や検証を行う基準になります。そのため、「使いやすい」といった曖昧な表現ではなく、後から試験によって合否を判断できる内容にすることが重要です。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)における設計・構築
URSで定めた要求をもとに、システムの機能や構成を具体化します。
代表的な文書には、機能仕様書(FS)や設計仕様書(DS)があります。FSでは必要な機能を定め、DSではその機能を実現するためのハードウェアやソフトウェア、設定内容などを整理します。
重要なのは、URSで定めた要求が設計へ正しく反映されていることです。
要求、機能、設計をつなげて管理することで、後の検証でも何を確認すべきか明確になります。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)における検証
システムの構築後は、要求や仕様どおりに機能することを確認します。
試験を行う際は、あらかじめ確認する内容と判定基準を定め、その結果を記録します。
例えば、アクセス権限を確認する場合は、管理者が操作できることだけでなく、一般ユーザーが管理者向けの機能を操作できないことも確認します。
このように、要求した機能が正常に動作することに加え、リスクに応じて異常条件や制限条件についても検証します。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)におけるDQ・IQ・OQ・PQ
CSVの検証では、DQ・IQ・OQ・PQが用いられる場合があります。
それぞれ確認する対象が異なり、設計から実際の運用まで段階的にシステムを評価します。
| 項目 | 名称 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| DQ | Design Qualification | 要求が設計へ適切に反映されているか |
| IQ | Installation Qualification | システムが仕様どおり据え付けられているか |
| OQ | Operational Qualification | 規定した条件で機能・性能を発揮するか |
| PQ | Performance Qualification | 実際の使用条件で必要な性能を発揮するか |
ただし、DQ・IQ・OQ・PQだけがCSVではありません。
CSVには、その前段階となるURSやリスク評価に加え、運用開始後の変更管理や廃棄まで含まれます。
また、すべてのシステムで4つを同じ方法で実施するとは限りません。システムの用途やリスク、既に実施した試験などを考慮し、必要な検証内容を決めます。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)のリスクベースアプローチ

CSVでは、すべての機能を同じ深さで検証するのではなく、リスクに応じて検証内容を決めます。
特に、製品品質、患者安全、データの信頼性へ与える影響が大きい機能は、重点的に確認します。
例えば、画面の表示色を変更する機能と、製造条件を自動計算する機能では、不具合が発生した場合の影響が異なります。後者は製品品質へ直接影響する可能性があるため、より詳細な検証が必要です。
一方で、リスクの低い機能まで同じ深さで試験すると、必要以上に工数が増える場合があります。
そのためCSVでは、どこにリスクがあるのかを明確にし、その影響に応じて必要な検証を行うことが重要です。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)の運用管理

CSVは、システムの検証が完了して運用を開始すれば終了するものではありません。
運用開始後も、アクセス管理、バックアップ、障害対応、変更管理などを行い、バリデートされた状態を維持します。
例えば、ソフトウェアの更新や設定変更を行った場合は、その変更が既存の機能や製品品質へ影響しないかを評価します。影響がある場合には、必要な範囲を再検証します。
また、障害が発生した場合には原因を調査し、製品品質やデータへの影響を確認します。
このように、日常的な運用管理を通じて、システムが意図した用途に継続して使用できる状態を維持します。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)における廃棄

CSVでは、システムの廃棄もライフサイクルの一部として管理します。
システムを新しいものへ切り替える場合には、旧システムの停止時期やデータの移行方法、必要な記録の保存方法などを検討します。
特に重要なのが、保存が必要な電子データを廃棄後も確認できる状態にしておくことです。
新しいシステムへデータを移行する場合には、必要なデータが正しく移行されていることを確認します。
そのため、廃棄時にはハードウェアやソフトウェアだけでなく、電子データや関連文書の保存・移行・廃棄方法まで整理します。
コンピューター化システムバリデーション(CSV)を進める際のポイント

CSVを適切に進めるためには、文書や試験の数を増やすことよりも、要求、リスク、設計、検証、運用を一つの流れとして管理することが重要です。
まず、URSでは後から試験によって合否を判断できるように要求事項を具体化します。そのうえで、製品品質やデータの信頼性への影響を評価し、リスクの高い機能を重点的に検証します。
また、URS、仕様書、試験記録の対応関係を明確にし、要求した内容がどの仕様へ反映され、どの試験で確認されたのかを追跡できる状態にします。
さらに、CSVはシステム完成時だけを考えるものではありません。
アクセス権限、バックアップ、障害対応、変更管理など、運用開始後の管理まで見据えて設計することで、バリデートされた状態を継続して維持しやすくなります。
コンピューター化システムバリデーションに関するよくある質問

Q1. コンピューター化システムバリデーション(CSV)とは何ですか?
コンピューター化システムが要求仕様を満たし、意図した用途に使用できることを確認する活動です。その結果は、後から確認できるよう文書として残します。
CSVは、システム導入時の試験だけを指すものではありません。要求仕様の作成から設計、検証、運用、変更、廃棄までをライフサイクルとして管理します。
Q2. コンピューター化システムバリデーション(CSV)の対象はどのように決めますか?
製造管理や品質管理に使用され、製品品質やGMP上のデータに影響するシステムが主な対象です。
代表例として、MES、LIMS、分析装置、SCADAを含む制御システムなどがあります。
ただし、すべてのシステムに同じCSVを行うわけではありません。用途や複雑さ、製品品質やデータへの影響を評価し、必要な対象範囲を決めます。
Q3. コンピューター化システムバリデーション(CSV)では、どのような文書を作成しますか?
代表的な文書には、URS、システムアセスメント、リスクアセスメント、機能仕様書(FS)、設計仕様書(DS)、試験記録、バリデーション報告書などがあります。
必要な文書は、システムの規模や複雑さ、リスクによって異なります。重要なのは文書の数ではなく、要求から設計、検証結果までを追跡できる状態にすることです。
Q4. コンピューター化システムバリデーション(CSV)では、DQ・IQ・OQ・PQを必ず行いますか?
必ずしも、すべてのシステムでDQ・IQ・OQ・PQを同じ形で実施するわけではありません。
システムの用途やリスク、すでに実施した試験内容などを踏まえて、必要な検証を決めます。
また、DQ・IQ・OQ・PQはCSVにおける検証活動の一部です。CSVには、要求仕様やリスク評価、運用管理なども含まれます。
Q5. コンピューター化システムバリデーション(CSV)はシステム導入後も必要ですか?
必要です。
運用開始後も、アクセス管理、バックアップ、障害対応、変更管理などを継続します。これにより、バリデートされた状態を維持します。
また、廃棄する際には、必要なデータの移行や保管方法も適切に管理する必要があります。
iCOM技研による導入サポート|CSVパレタイザー導入の「壁」を取り除く


協働ロボットの導入に不安がある方でも、iCOM技研による以下のサポート体制で安心です。
- 使用目的に合ったモデル選定のコンサルティング
- 導入前の実機デモ・テストで効果を可視化
- ロボット操作教育、安全指導まで含めた現場立ち上げ支援
- ロボットシステム全体の提案(ハンドツール選定)
弊社では協働ロボットを中心とした様々なメーカーを取り扱っております。また、最適なロボット選定からシステム開発・立ち上げまで一貫してご支援可能です。
パレタイジングに関するお問い合わせ・相談お待ちしております。
「自社にも自動化を」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
