製造現場では、箱や部品、ロール材などの重量物を持ち上げ、搬送、反転、位置合わせする作業があります。こうした作業の身体負担を軽減する助力装置が「ラクラクハンド」です。
ラクラクハンドは、ワークの重量を装置側で支え、作業者が小さな力で操作できるようにします。一般的には、バランサーやハンドクレーンに分類される装置です。
本記事では、ラクラクハンドの仕組みや種類、用途、メリット、選定ポイントを解説します。ホイストとの違いや、産業用ロボット、協働ロボットなどの代替ソリューションについても紹介します。
目次[]
ラクラクハンドとは

ラクラクハンドとは、一般的にはバランサーやハンドクレーンに分類されます。
ワークの重量を装置側で支え、作業者が手で誘導して使用します。産業用ロボットのように自動で動く設備ではなく、人の判断や感覚を残しながら作業負担を軽減する装置です。
持ち上げや搬送だけでなく、旋回、傾斜、反転、挿入、位置合わせにも対応します。パレットへの積み付け、工作機械へのワーク着脱、部品の組付け、ロール材の装着などに使用されています。
完全な無人化ではなく、作業者による判断を残した省力化に向いています。
ラクラクハンドとホイストの違い

ホイストやクレーンも重量物を持ち上げる設備ですが、ラクラクハンドとは操作方法や得意な作業が異なります。
ホイストは、スイッチ操作によって重量物を巻き上げ、上下へ搬送します。単純な吊り上げや設備間搬送に適した装置です。
ラクラクハンドは、ワークの重量を釣り合わせた状態で、作業者が直接誘導します。細かな位置合わせや姿勢変更が必要な作業では、ホイストより操作しやすい場合があります。
| 比較項目 | ラクラクハンド | ホイスト・クレーン |
|---|---|---|
| 主な目的 | 搬送、姿勢変更、位置合わせ | 吊り上げ、上下搬送 |
| 操作方法 | 作業者が手で誘導 | スイッチで昇降 |
| 位置合わせ | 細かく調整しやすい | 微調整に時間がかかる場合がある |
| 傾斜・反転 | アタッチメントにより対応 | 別の治具が必要になりやすい |
| 主な用途 | 組付け、投入、積み付け | 単純搬送、荷役作業 |
上下移動が中心であれば、ホイストのほうが設備を簡素化できる場合があります。反転、挿入、位置合わせを含む工程では、ラクラクハンドが候補です。になります。
ラクラクハンドの仕組み
ラクラクハンドは、本体、アーム、駆動部、操作部、アタッチメントなどで構成されます。
アタッチメントは、ワークを吸着、把持、支持する先端部分です。人の手に置き換えると、指先に相当します。
作業時は、アタッチメントでワークを保持し、装置がワークとアタッチメントの重量を支えます。作業者は大きな力を加えずにワークを誘導し、必要に応じて移動、旋回、傾斜、反転、位置合わせを行います。
重量を支える方式には、エアー式、電気式、ハイブリッド式があります。方式によって対応できる重量変化、操作感、必要な動力源が異なるため、ワークや工程に合わせた選定が必要です。
バランサー「ラクラクハンド」の主な種類と特徴
バランサーには、駆動方式や扱うワークに応じて複数の種類があります。アイコクアルファの「ラクラクハンド」では、エアー式、電気式、ハイブリッド式、ハンディーハンド、カンタンハンドを展開しています。
エアー式ラクラクハンド
エアー式は、工場の圧縮空気を動力源として使用するバランサーです。ワークの重量と装置の支持力を釣り合わせ、作業者が小さな力で動かせる状態をつくります。
重量が一定のワークを繰り返し搬送する工程や、手の感覚を生かして細かく位置合わせする作業に向いています。公開されているラインアップでは、30kg級から350kg級までの機種が確認できます。
ワークの重量が頻繁に変わる工程では、適切なバランスを保ちにくい場合があります。重量差が大きい場合は、電気式やハイブリッド式も比較します。
電気式ラクラクハンド
電気式は、電動モーターによって昇降を制御するバランサーです。操作レバーなどを使用し、ワークを任意の速度で上下へ移動させます。
重量が異なるワークでも、毎回バランスを調整せずに扱える点が特徴です。多品種の部品や大型ワーク、重量差のある製品を同じ設備で扱う工程に向いています。
公開ラインアップでは、50kg級から700kg級までの機種が確認できます。機種によっては、上下速度や移動範囲の設定、過負荷や衝撃の検知、外部設備との信号連携にも対応します。
設置には単相AC200Vなどの電源が必要です。真空吸着を使用する場合は、圧縮空気や真空源も確認します。
ハイブリッド式ラクラクハンド
ハイブリッド式は、圧縮空気による助力と、電気による重量検出や制御を組み合わせたバランサーです。
エアー式に近い軽い操作感を保ちながら、重量が変化するワークへ対応しやすい点が特徴です。メーカーは、軽量機向けのELB制御と、中・重量機向けのSLB制御を案内しています。
内容量が異なる容器、重量が分からないワーク、複数品種の仕分け、原料投入など、毎回の荷重が一定ではない工程に向いています。
電源と圧縮空気の両方を使用するため、エアー式より設備構成は複雑です。制御盤や配管を含めた設置スペースも確認します。
ハンディーハンド
ハンディーハンドは、形状や大きさが異なるワークを、手作業に近い感覚で扱うことを想定したモデルです。
公式仕様では定格重量30kgの機種が示されています。グローブ式アタッチメントにより、持ち上げる、回す、傾けるといった動作を補助します。
少量多品種の工程や、専用の吸着パッドやクランプを設計しにくい異形状ワークで候補になります。ただし、表面状態や重心によって操作性が変わるため、実機テストが必要です。
カンタンハンド
カンタンハンドは、袋やカートンなど、対象ワークを限定して構成されたシリーズです。
企業向けには袋用とカートン用があり、吸着によってワークを保持し、パレットへの積み付けや移載作業を補助します。用途が明確なため、条件が合えば導入仕様を整理しやすい点が特徴です。
袋の通気性やしわ、段ボール表面の粗さによっては、安定した吸着が難しい場合があります。ワーク現物を使用し、保持力や搬送中のずれを確認することが重要です。
バランサーでできる作業・用途
バランサーは、重量物の持ち上げや搬送だけでなく、反転、傾斜、位置合わせ、設備への着脱などにも使用されます。
パレタイズ・デパレタイズ
箱、袋、缶、容器などをパレットへ積み付けたり、取り下ろしたりする作業です。装置が重量を支えるため、作業者は積み付け位置の調整に集中できます。

工作機械へのワーク着脱
素材や加工品を旋盤、マシニングセンタ、研削盤などへセットする作業です。重量物を支えながら、チャックや治具へ細かく位置合わせできます。

部品の組立・組付け
自動車部品、機械部品、パネルなどの向きを変え、所定の位置へ組み付ける作業です。専用アタッチメントにより、傾斜や反転を伴う工程にも対応します。

ロール材の搬送・装着
フィルム、紙、金属箔などのロール材を持ち上げ、設備のシャフトへ装着する作業です。内径や外径を把持し、必要に応じて水平・垂直方向へ姿勢を変更します。

原料の投入
袋、缶、容器などに入った原料を、ホッパーや混合機へ投入する作業です。持ち上げ、移動、傾斜、排出までを補助し、投入時の身体負担を軽減します。

対応できる作業は、本体の種類だけでなく、アタッチメントの保持方法や反転機構によって変わります。ワークの重量、形状、姿勢変更の有無を整理したうえで選定することが重要です。
ラクラクハンドのメリットとデメリット

ラクラクハンドは、作業者が操作する助力装置です。身体負担や作業性の改善が期待できる一方、無人化には対応できず、設置条件やアタッチメントの検討も必要です。
ラクラクハンドのメリット
ラクラクハンドは、ワークの重量を装置側で支えるため、持ち上げや中腰作業による腰や肩への負担を軽減しやすくなります。条件によっては、従来の二人作業を一人で行えるようになり、人員配置の柔軟化にもつながります。
作業者がワークを直接誘導するため、組付け穴への挿入や治具へのセットなど、細かな位置合わせにも向いています。ワークに合わせたアタッチメントを使用すれば、落下や設備への接触を抑え、傷や破損の防止にも役立ちます。
操作力を軽減して作業手順を標準化することで、特定の作業者への依存を緩和できる場合もあります。ただし、操作方法や異常時対応についての教育は必要です。
ラクラクハンドのデメリット
ラクラクハンドは人が操作するため、完全な無人化や夜間の自動運転には対応できません。作業速度も作業者によって変わるため、一定の高速タクトを求める工程では、ロボットや専用機が適する場合があります。
設置時には、本体や支柱だけでなく、アームとワークの旋回範囲を確保する必要があります。既設設備や柱、作業通路との干渉が多い現場では、配置が難しくなることがあります。
ワークの形状や作業内容によっては、専用アタッチメントの設計も必要です。現場に合わせられる反面、仕様検討や製作、実機テストに時間と費用がかかります。ワークや工程が変わる場合は、改造や作り直しが必要になることもあります。
処理能力が作業者に左右される
人が操作するため、作業速度やサイクルタイムには個人差が生じます。
一定のタクトを高い精度で繰り返す工程では、産業用ロボットや専用機のほうが適する場合があります。
積み付け作業を改善する主なソリューション

積み付け作業の改善方法には、ラクラクハンド、機械式パレタイザー、産業用ロボットパレタイザー、協働ロボットパレタイザーがあります。
各方式は、省力化・自動化の範囲や設置スペース、品種変更への対応力が異なります。現在の作業だけでなく、将来の生産計画も含めて選定することが重要です。
ラクラクハンド

ラクラクハンドは、製品の重量を装置側で支え、作業者が積み付け位置まで誘導する助力装置です。
製品の向きや位置にばらつきがあっても、人が判断しながら対応できます。現在の作業方法を大きく変えず、身体負担を軽減したい現場に向いています。
ただし、作業者は引き続き必要であり、無人化を目的とする設備ではありません。
機械式パレタイザー

機械式パレタイザーは、コンベヤや昇降機構などを組み合わせ、決められたパターンで製品を積み付ける専用設備です。
製品寸法や積み付け方法が一定であれば、安定した処理能力を確保しやすくなります。一方で、品種や積み付けパターンが変わると、機構の改造が必要になる場合があります。
産業用ロボットパレタイザー

産業用ロボットパレタイザーは、高速かつ一定の動作で製品を自動積み付けする設備です。
生産量が多く、長時間の連続運転や無人化を重視する現場に適しています。ただし、安全柵や製品供給設備を含めると、広い設置スペースが必要になる場合があります。
協働ロボットパレタイザー
協働ロボットパレタイザーは、人が積み付けていたスペースへ設置しやすい、比較的コンパクトな自動化設備です。
既設設備によって大型設備の設置が難しい現場でも、後付けできる場合があります。人が製品を供給し、ロボットが積み付けるなど、作業を分担できる点も特徴です。
プログラムやロボットハンドを変更すれば、品種や積み付けパターンの変更にも対応できます。そのため、多品種少量生産や将来の工程変更を見込む現場に向いています。
ただし、協働ロボットであっても、安全柵なしで使用できるとは限りません。処理速度、製品重量、挟まれの危険などを評価し、必要な安全対策を決める必要があります。
ラクラクハンドの選定ポイント

ラクラクハンドは、可搬重量だけでなく、ワークの形状や重量変化、必要な動作、設置スペースを含めて選定します。
まず、ワークの最大重量にアタッチメント重量を加え、必要な定格荷重を確認します。重量が一定であればエアー式、重量差がある場合は電気式やハイブリッド式が候補です。
次に、吸着、クランプ、反転、傾斜、位置合わせなど、工程に必要な動作を整理します。アームの旋回範囲や上下ストローク、既設設備との干渉も確認が必要です。
最終的にはワーク現物でテストを行い、保持の安定性、操作性、傷や変形の有無、必要なタクトタイムを確認します。無人化を目的とする場合は、産業用ロボットや協働ロボットも比較します。
iCOM技研による導入サポート|自動化の「壁」を取り除く


協働ロボットの導入に不安がある方でも、iCOM技研による以下のサポート体制で安心です。
- 使用目的に合ったモデル選定のコンサルティング
- 導入前の実機デモ・テストで効果を可視化
- ロボット操作教育、安全指導まで含めた現場立ち上げ支援
- ロボットシステム全体の提案(ハンドツール選定)
弊社では協働ロボットを中心とした様々なメーカーを取り扱っております。また、最適なロボット選定からシステム開発・立ち上げまで一貫してご支援可能です。
パレタイジングに関するお問い合わせ・相談お待ちしております。
「自社にも自動化を」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
