製造工場では、材料や部品を工程間で移動するために、コンベア、AGV、AMR、クレーンなど、さまざまな搬送設備が使用されています。
その中でも、工場上部を搬送経路として利用する設備が「天井搬送システム」です。天井クレーンやモノレール、電動モノレール、半導体工場で使用されるOHTなど、用途に応じてさまざまな方式があります。
床面を搬送経路として使用しないため、生産設備や作業スペースを確保しやすく、人やフォークリフトとの動線も分離しやすい点が特徴です。
さらに近年では、天井側を自律走行する搬送システムや、協働ロボットを天吊りで移動させる技術も登場しています。造船や重工のような大型ワークを扱う現場では、ワークを動かすのではなく、ロボット側を作業位置へ移動させる方法も検討されています。
本記事では、天井搬送システムの種類やAGV・AMRとの違い、主要メーカーと製品、天吊り協働ロボットによる自動化について解説します。
目次[]
天井搬送システムとは
天井搬送システムとは、工場や倉庫の上部にレールや走行設備を設置し、その経路を利用して材料や製品を搬送する設備です。
代表的なものには、天井クレーン、ライトクレーン、モノレール、電動モノレール、OHTなどがあります。作業者が操作する設備から、搬送指示を受けて自動走行するシステムまで、自動化の程度もさまざまです。
扱う荷物も、小型部品や半導体用キャリアから、金型、機械部品、車体などの重量物まで幅広くあります。そのため、搬送重量や搬送距離、経路、必要な処理能力に合わせて方式を選定します。
天井搬送システムを使用する目的
天井搬送システムを利用する大きな目的は、床面を使用せずに材料や製品を移動させることです。
一般的なコンベアは床面へ固定設備を設置します。AGVやAMRは設備自体を固定する必要はありませんが、車両が走行するためのスペースが必要です。
一方、天井搬送では工場上部を搬送経路として利用できます。床面を生産設備や作業スペースとして使いやすくなり、人やフォークリフトとの動線も分離しやすくなります。
天井搬送システムの主な種類
天井搬送システムには、一定の作業エリア内で荷物を移動させる方式と、決められたレールに沿って工程間を搬送する方式があります。
さらに、自動車や半導体などの量産工場では、複数の搬送台車を制御しながら自動搬送するシステムも利用されています。
天井クレーン

天井クレーンは、工場上部に設置した走行レールを利用し、荷物を吊り上げながら移動させる設備です。
一般的には、クレーン全体を建屋方向へ動かす「走行」、ホイストなどを左右へ動かす「横行」、荷物を上下させる「巻上げ」を組み合わせます。これにより、一定の作業エリアを面的にカバーできます。
鉄鋼、機械加工、金型、組立、資材搬送など、重量物を扱う工程で広く使用されています。手動操作だけでなく、位置検出や制御装置を組み合わせて自動運転する設備もあります。
ライトクレーン

ライトクレーンは、比較的軽量な荷物の搬送やハンドリングを補助する設備です。
アルミや軽量鋼製のレールを利用し、作業者が小さな力で荷物を移動できるように設計されています。工作機械へのワーク供給や、組立工程での部品搬送・位置合わせなどに使用されます。
重量物を完全自動で搬送するというよりも、人が行う作業を補助する用途に向いています。
モノレール搬送システム

モノレール搬送システムは、天井や架台へ設置したレールに沿って、搬送台車やホイストを移動させる方式です。
天井クレーンが一定の面積内を走行・横行するのに対し、モノレールは基本的に設定された経路を走行します。そのため、「工程Aから工程Bへ」といった決まった搬送を繰り返す用途に適しています。
直線だけでなく、カーブや分岐を組み合わせることで、複数工程をつなぐ搬送ラインも構築できます。
電動モノレール

電動モノレールは、搬送台車にモーターを搭載し、レール上を自動走行させる方式です。
EMS(Electrified Monorail System)などと呼ばれることもあり、複数の搬送台車を同じシステム内で運行できます。台車ごとに速度を変更したり、指定した工程で停止させたりできる設備もあります。
自動車工場では、車体や部品を組立工程へ搬送する設備として利用されています。一定速度で流すコンベアよりも、工程ごとの停止や搬送順序を制御しやすい点が特徴です。
OHT

OHTは「Overhead Hoist Transport」の略で、天井に設置した軌道を自動走行する搬送装置です。
ホイスト機構を備えており、製造装置や保管設備へ荷物を直接受け渡せます。特に半導体工場では、FOUPなどのキャリアを多数の製造装置間で搬送する設備として使用されています。
OHTは単独で使用するだけでなく、ストッカーやバッファ、搬送管理システムなどと組み合わせます。工場全体のマテリアルフローを制御する大規模な自動搬送システムとして利用されます。
天井走行型の自律搬送システム

近年では、従来のモノレールやOHTとは異なる天井搬送システムも開発されています。
特徴の一つが、レールを単純な一本の経路として使うのではなく、複数のモジュールを組み合わせて天井側に面的な移動ネットワークを構築する方式です。
代表例のCeiliXでは、モジュール式の天井インフラを基盤として、手動搬送、自律搬送、ロボット作業を同じプラットフォーム上で行う構想を進めています。
天井搬送システムとAGV・AMRの違い
工場内搬送を自動化する場合、天井搬送だけでなくAGVやAMRも候補になります。
大きな違いは、搬送装置が移動する場所と、搬送経路を変更する方法です。
| 比較項目 | 天井搬送システム | AGV・AMR |
|---|---|---|
| 搬送経路 | 天井・工場上部 | 床面 |
| 床面スペース | 原則として走行路に使用しない | 走行スペースが必要 |
| 人との動線 | 分離しやすい | 同じ床面を使用 |
| 重量物搬送 | クレーンなどで対応しやすい | 車体仕様による |
| 上下搬送 | ホイストを利用しやすい | 昇降機構などが必要 |
| 経路変更 | レール変更が必要な場合がある | AMRは比較的容易 |
| 建屋側設備 | レール・支持構造が必要 | 比較的少ない |
AMRは、既存工場へ後付けしやすく、走行経路をソフトウェア上で変更しやすい点が特徴です。
一方、床面に作業者やフォークリフトが多い工場では、人との交差によって減速や停止が発生する場合があります。天井搬送では搬送経路そのものを上部へ移せるため、こうした影響を受けにくい構成を作れます。
どちらが優れているというものではありません。搬送重量、床面スペース、搬送経路の変更頻度、建屋条件などによって適した方式は異なります。
天井搬送システムの主要メーカーと製品
天井搬送システムは、メーカーによって対象とする搬送物や自動化の範囲が異なります。作業者の重量物搬送を補助するライトクレーンから、自動車工場の自走式モノレール、半導体工場のOHTまで、同じ天井搬送でも役割は大きく異なります。
さらに近年では、CeiliXのように協働ロボットを搭載し、搬送だけでなくロボット作業まで行うシステムも登場しています。ここでは、天井搬送の代表的な方式が分かるように、主要メーカーと製品を紹介します。
キトー
キトーは、チェーンブロック、ホイスト、クレーンなどを展開する国内のマテリアルハンドリングメーカーです。天井搬送では、大量の製品を無人搬送する設備というより、作業者による重量物ハンドリングを補助する製品を得意としています。
代表的な製品が「ライトクレーンPROシステム2」です。工作機械へのワーク供給や金型・治具の移動、組立工程での位置合わせなど、人の判断を残しながら搬送作業を省力化したい工程に適しています。
ライトクレーンPROシステム2

「ライトクレーンPROシステム2」は、アルミレールを使用した軽量クレーンシステムです。
走行、横行、巻上げを組み合わせることで、作業エリア内の荷物を三次元的に移動できます。また、電動走行用のドライブユニットなどを追加し、作業負担に応じて電動化することも可能です。
天井から吊り下げる構成だけでなく、自立式のポータルクレーンなどもあります。そのため、建屋条件や作業範囲に合わせて構成を選択できます。
| 主な仕様 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | ライトクレーン |
| 定格荷重 | 構成による※ポータルタイプは最大1,000kg |
| 移動方式 | 手動/電動走行に対応 |
| 主な用途 | 重量物搬送、組立、ワーク供給 |
| 協働ロボット搭載 | 記載なし |
Demag
Demagは、クレーン、ホイスト、モノレールなどを展開するドイツのマテリアルハンドリングメーカーです。天井搬送では「KBKモジュラークレーンシステム」を展開し、標準化されたレールや搬送部品を組み合わせて設備を構築します。
クレーンだけでなく、モノレールや分岐を組み合わせられる点が特徴です。そのため、一つの作業エリアだけでなく、複数の工作機械や工程を結ぶ搬送システムにも対応できます。
KBKモジュラークレーンシステム
「KBK」は、標準化された部材を組み合わせるモジュール式のクレーン・モノレールシステムです。
直線レールだけでなく、曲線や分岐などを組み合わせられます。設備配置に合わせて搬送経路を構成できるため、工作機械間の部品搬送や組立、ラインサイド物流などに適しています。
構成によっては最大3,200kgまでの荷重に対応します。また、マニピュレータや昇降装置などを支持する用途にも使用できます。
| 主な仕様 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | モジュール式クレーン・モノレール |
| 最大荷重 | 最大3,200kg※構成による |
| 経路構成 | 直線、曲線、分岐など |
| 主な用途 | 工程間搬送、組立、機械加工 |
| 協働ロボット搭載 | 記載なし |
ダイフク
ダイフクは、自動倉庫、コンベア、仕分け設備、半導体搬送、自動車生産ラインなどを展開する国内のマテリアルハンドリングメーカーです。自動車分野では、車体や部品を工程間で搬送する各種システムを展開しています。
天井搬送の代表的な製品が、1983年に開発されたモノレールシステム「ラムラン」です。各キャリヤが自走するため、量産ラインでも工程ごとに走行や停止を制御できます。
ラムラン

「ラムラン」は、搬送物を保持するキャリヤ自体にモーターとホイールを搭載した自走式モノレールです。
チェーンで複数の搬送物を一括して動かす方式とは異なり、キャリヤごとに可変速走行や停止ができます。そのため、工程ごとに作業時間が異なる自動車生産ラインでも柔軟に運用できます。
また、昇降装置や移載装置をキャリヤへ追加できます。これにより、単純な工程間搬送だけでなく、生産設備との受け渡しまで含めた自動化が可能です。
最大搬送速度は毎分120m、変速範囲は1:20です。連続搬送と間欠搬送に対応し、人による作業とロボット作業の両方を組み込める点も特徴です。
| 主な仕様 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | 自走式モノレール |
| 最大搬送速度 | 120m/分 |
| 変速範囲 | 1:20 |
| 主な用途 | 自動車生産ライン、工程間搬送 |
| 協働ロボット搭載 | 記載なし |
なお、ラムランには非接触給電方式の「ラムランHID」もあります。HIDでは電磁誘導によってキャリヤへ給電するため、スパークや摩耗粉を抑えられます。
村田機械
村田機械は、物流システム、工作機械、クリーンFAなどを展開する国内メーカーです。半導体分野では、OHTを中心に、保管設備やバッファ、搬送管理システムを組み合わせた「Clean AMHS」を展開しています。
天井搬送だけを単独で提供するのではなく、半導体工場全体の搬送・保管を一つのシステムとして構築する点が特徴です。
OHT(Overhead Hoist Transport)

OHTは、天井に設置した軌道を自動走行する搬送装置です。
村田機械のOHTは、ベルト駆動で上下するホイスト機構を備えています。これにより、半導体製造装置や保管設備のロードポートへFOUPなどのキャリアを直接受け渡します。
半導体工場では、多数のOHTを同じ搬送網で運行します。さらに、OHB、Carrier Stocker、Near Tool Bufferなどを組み合わせ、搬送要求の集中や装置前での待ち時間を抑えます。
そのため、OHTは単なる天井搬送車ではありません。ストッカーやバッファ、MCSなどと連携し、工場全体のマテリアルフローを構成するClean AMHSの中核設備です。
| 主な仕様 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | OHT(天井走行式無人搬送車) |
| 搬送対象 | FOUPなどの半導体用キャリア |
| 荷役方式 | ベルト駆動ホイストによる自動受け渡し |
| 主な用途 | 半導体工場の工程内・工程間搬送 |
| 協働ロボット搭載 | 標準用途として公表なし |
CeiliX
CeiliXは、ドイツを拠点に天井搬送・ロボットプラットフォームを開発する企業です。従来のモノレールが主に線状の経路を走行するのに対し、CeiliXでは複数のレールモジュールを組み合わせ、天井側に面的な移動ネットワークを構築します。
さらに、搬送だけでなく協働ロボットの移動基盤として利用できる点が特徴です。「CeiliX-Elements」を共通インフラとして、手動搬送用の「CeiliX-Runner」と、自律走行する「CeiliX-Bot」などを展開しています。
CeiliX-Elements

CeiliXプラットフォームの基盤となるモジュール式の天井レールです。
複数のレールモジュールを組み合わせることで、直線経路だけでなくX・Y方向へ広がる移動ネットワークを構築できます。
また、同じインフラ上でRunnerとBotを運用できます。そのため、最初は手動搬送として導入し、将来的に自律搬送やロボット作業へ発展させる構成も考えられます。
| 主な仕様 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | モジュール式天井レール |
| 移動範囲 | X・Y方向を含む面的なネットワーク |
| 対応機器 | CeiliX-Runner/CeiliX-Bot |
| 主な用途 | 天井搬送インフラ |
| 協働ロボット搭載 | Botなどを介して対応可能 |
CeiliX-Runner

「CeiliX-Runner」は、CeiliX-Elements上を移動する手動搬送用キャリアです。
CR-250は最大250kg、CR-500は最大500kgに対応します。作業者がキャリアを移動させ、バッテリー式のホイストなどと組み合わせて荷物を搬送します。
ライトクレーンや手動モノレールに近い役割を持ちます。一方、固定された一本のレールだけでなく、CeiliX-Elementsによる面的な経路を利用できる点が特徴です。
| 主な仕様 | CR-250 | CR-500 |
|---|---|---|
| 最大可搬重量 | 250kg | 500kg |
| 走行方式 | 手動 | 手動 |
| 走行インフラ | CeiliX-Elements | CeiliX-Elements |
| 主な用途 | 搬送・ハンドリング | 重量物搬送 |
| 協働ロボット搭載 | 標準用途ではない | 標準用途ではない |
CeiliX-Bot

「CeiliX-Bot」は、CeiliX-Elements上を自律走行する搬送・ロボットプラットフォームです。
CB-200は最大200kg、CB-400は最大400kgに対応します。搬送物だけでなく、グリッパーや昇降機構、ロボットアームなどを搭載できる点が大きな特徴です。
そのため、単純な工程間搬送だけではありません。工作機械からワークを取り出し、別の設備まで移動して投入するといった自動化にも展開できます。
| 主な仕様 | CB-200 | CB-400 |
|---|---|---|
| 最大可搬重量 | 200kg | 400kg |
| 走行方式 | 自律走行 | 自律走行 |
| 位置認識 | コード+カメラ | コード+カメラ |
| 主な用途 | 自動搬送・ロボット作業 | 重量物搬送・ロボット作業 |
| 協働ロボット搭載 | 対応可能 | 対応可能 |
床上を移動する「AMR+協働ロボット」と考え方は似ています。ただし、CeiliX-Botでは移動経路を天井側へ配置します。
そのため、工作機械や治具、作業者、フォークリフトなどが多く、床面にロボットの走行経路を確保しにくい工場でも選択肢になります。
CeiliX SkyBot

「CeiliX SkyBot」は、ロボットアームそのものを天井側で移動させる構想です。
天井インフラと走行機構の下部へロボットアームやツールを搭載します。固定ロボットのように一つの場所だけを担当するのではなく、複数の作業場所へ移動できる点が特徴です。
特に、造船や重工のように大型ワークを扱う工程では、ワークをロボットセルへ移動させることが難しい場合があります。そこで、ロボット側を作業位置まで移動させる考え方が有効になります。
| 主な仕様 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | 天井走行型ロボットプラットフォーム |
| 移動方式 | CeiliX天井ネットワーク |
| 搭載物 | ロボットアーム、工具など |
| 主な用途 | ハンドリング、加工、検査など |
| 協働ロボット搭載 | 対応可能 |
例えば、船体ブロックや大型鋼構造物に沿ってロボットを移動させ、溶接、研磨、検査などを行う構成が考えられます。
床面に長い走行軸を設置する方法と比べ、作業者や台車の通路を確保しやすい点も天吊り構成のメリットです。
天吊りで使用できる協働ロボット
協働ロボットは床や架台へ設置する方法が一般的ですが、機種によっては天井へ逆さ向きに取り付けて使用できます。
天吊りにすると、床面へロボット架台を置く必要がありません。そのため、工作機械や大型ワークの上方からアクセスしながら、作業者や台車が使うスペースを確保できます。
さらに、天井走行軸や天井搬送システムへ搭載すれば、ロボット本体を移動させることも可能です。これにより、固定ロボットのリーチを超えて、複数の設備や大型ワークを一台でカバーできます。
天吊りで機種を選定する場合は、可搬重量だけでなく、リーチと本体重量も重要です。特に走行軸へ搭載する場合、ロボット本体そのものが移動重量に含まれるためです。
Universal Robots

Universal Robotsは、デンマークの協働ロボットメーカーです。
天吊り用途では、可搬重量やリーチに対して本体重量を比較的抑えた機種が多いことが特徴です。特にe-Seriesは、天井走行軸や昇降軸へロボット自体を搭載する場合に候補にしやすいシリーズです。
Universal Robotsの機種一覧
| 機種 | 最大可搬重量 | リーチ | 本体重量 |
|---|---|---|---|
| UR3e | 3kg | 500mm | 11.2kg |
| UR7e | 7.5kg | 850mm | 20.6kg |
| UR12e | 12.5kg | 1,300mm | 33.5kg |
| UR16e | 16kg | 900mm | 33.1kg |
| UR8 Long | 10kg | 1,750mm | 44.7kg |
| UR15 | 17.5kg | 1,300mm | 40.7kg |
| UR18 | 18kg | 950mm | 39.2kg |
| UR20 | 25kg | 1,750mm | 64kg |
| UR30 | 35kg | 1,300mm | 63.5kg |
FANUCのCRXシリーズと比べると、Universal Robotsは中可搬クラスで本体重量を抑えやすい傾向があります。
また、UR8 LongとUR20は1,750mmの長いリーチを持っています。大型ワークや複数設備へアクセスする場合は、ロボット単体のリーチを確保することで、走行軸の移動量を減らせる可能性があります。
このためUniversal Robotsは、本体重量を抑えながらロボット自体を天井側で移動させたい用途に向いています。
FANUC

FANUCは、産業用ロボット、協働ロボット、CNCなどを展開する国内FAメーカーです。
CRXシリーズでは3kgから30kgまで幅広い可搬重量をカバーしており、小型軽量機から高可搬・長リーチ機まで選択肢が広いことが特徴です。
FANUC CRXシリーズの機種一覧
| 機種 | 最大可搬重量 | リーチ | 本体重量 |
|---|---|---|---|
| CRX-3iA | 3kg | 692mm | 11kg |
| CRX-5iA | 5kg | 994mm | 25kg |
| CRX-10iA | 10kg | 1,249mm | 40kg |
| CRX-10iA/L | 10kg | 1,418mm | 40kg |
| CRX-20iA/L | 20kg | 1,418mm | 41kg |
| CRX-30iA | 30kg | 1,756mm | 135kg |
Universal Robotsと比較すると、FANUCは高可搬と長いリーチを組み合わせた機種を選びやすい点が特徴です。
また、CRX-10iA/Lは10kg可搬で1,418mmのリーチを持ちます。10kgクラスでさらに長いリーチが必要な場合は、Universal RobotsのUR8 Longが1,750mmまで届くため、作業範囲とのバランスで比較します。
一方、CRX-30iAは30kg可搬、1,756mmリーチと大型ですが、本体重量は135kgです。天井走行軸へ搭載する場合は、走行装置や支持構造も相応に大型化する必要があります。
このためFANUCは、本体重量の軽さよりも、可搬重量やリーチを優先したい天吊り用途で選択肢を広げやすいメーカーです。
造船・重工で天吊り協働ロボットを活用するメリット

造船や重工では、自動車や電子部品の工場とは異なる自動化上の課題があります。
船体ブロック、大型鋼構造物、建設機械部品などはワークそのものが大きく、一般的なロボットセルへ製品を搬入することが難しいためです。
そのため、ワークをロボットのところへ運ぶのではなく、ロボットをワークのところへ移動させるという考え方が有効になります。
大型ワークを移動させずに作業できる
造船や重工で扱うワークは、数mから数十m規模になる場合があります。
このようなワークをロボットセルへ移動させるには、大型クレーンや搬送台車が必要です。さらに、工程ごとの位置決めにも時間がかかります。
そこで、協働ロボットを天井側から移動させれば、ワークを固定したままロボット側が作業場所へ移動できます。
大型構造物の溶接、研磨、バリ取り、塗布、検査などで活用が考えられます。
一台のロボットで広い作業範囲をカバーできる
固定された協働ロボットの作業範囲は、基本的にアームのリーチによって決まります。
一方、天井走行軸やCeiliXのような移動プラットフォームと組み合わせれば、ロボット本体を移動できます。
例えば、長い船体ブロックに沿ってロボットを移動させながら溶接したり、大型鋼板の複数箇所を研磨したりする構成です。
床上に長い走行軸を設置する方法もありますが、天井へ移すことで作業者や台車の通路を確保しやすくなります。
溶接・研磨・検査などへ展開できる
造船や重工では、一つの大型ワークに対して複数の作業を行います。
例えば、溶接後にビードの仕上げや研磨を行い、その後に外観検査や各種計測を行う工程があります。
天井側を移動する協働ロボットへツールチェンジャーなどを組み合わせれば、作業に応じて溶接トーチ、研磨工具、カメラ、センサーを交換する構成も考えられます。
ロボットの移動設備を共通化し、複数の作業へ利用できることは、大型ワークを扱う工程で大きなメリットになります。
床面の設備や作業者との干渉を減らしやすい
造船所や重工工場では、大型ワーク、治具、溶接機、作業台、フォークリフト、台車などが床面に配置されています。
そのため、床上を走行するロボットの経路を常に確保できるとは限りません。
ロボットの移動経路を天井側へ配置すれば、床面設備との干渉を減らしやすくなります。
ただし、船体内部など天井側からアクセスできない場所もあります。天吊りロボットだけですべての工程を自動化するのではなく、固定ロボット、AMR、小型移動ロボットなどと使い分けることが重要です。
天井搬送システムを導入するメリット

天井搬送システムの大きなメリットは、工場上部を搬送空間として利用できることです。
床面には、生産設備、作業者、台車、フォークリフト、AGV・AMRなどが集まります。そこで、搬送経路を上部へ移すことで、床面のレイアウトを整理しやすくなります。
床面を有効利用できる
コンベアを設置した場所やAGV・AMRの走行通路は、他の用途と共有しにくくなります。
一方、天井搬送では工場上部を利用します。そのため、床面を生産設備の設置や作業、保管、通行などに使いやすくなります。
特に、既存設備が多く床面に余裕がない工場では、上部空間を搬送経路として活用できることが大きなメリットです。
人と搬送設備の動線を分離しやすい
AGVやAMRは、作業者やフォークリフトと同じ床面を移動します。そのため、人の横断や障害物によって減速・停止する場合があります。
天井搬送では、搬送経路そのものを上部へ配置できます。これにより、作業者やフォークリフトとの交差を減らしやすくなります。
ただし、吊り荷やロボットが人の上方を通過する場合は、別途安全対策が必要です。搬送経路だけでなく、昇降位置やロボットの可動範囲まで含めてリスクアセスメントを行います。
重量物を搬送しやすい
天井クレーンやホイストを利用すれば、人が直接持ち上げることが難しい重量物も搬送できます。
例えば、金型、機械部品、材料などを繰り返し運ぶ工程です。こうした作業では、作業者の身体的負担を軽減する方法としても利用できます。
また、床上の搬送車では扱いにくい重量物でも、クレーンやホイストを組み合わせることで対応できる場合があります。
工程間搬送を自動化できる
電動モノレールやOHTでは、搬送指示に応じて目的地まで自動走行できます。
さらに、PLCや上位システムと連携すれば、生産設備の稼働状況に合わせた搬送も可能です。例えば、加工完了を受けて搬送を開始したり、製品の種類によって搬送先を切り替えたりできます。
複数台を運行するシステムでは、搬送要求の優先順位や台車の割り当てまで制御することもできます。
天井搬送システムを導入する際のポイント

天井搬送システムを選定する際は、可搬重量や最高速度だけでなく、建屋条件や受け渡し方法まで確認することが重要です。
まず、搬送する製品に加えて、ホイスト、吊り具、治具、グリッパーなどを含めた総重量を確認します。ロボットを搭載する場合は、ロボット本体やツール、ワークの重量も考慮します。
また、天井側へ設備を設置するため、梁や支持構造が必要な荷重に耐えられるか確認します。既存工場では、配管、ダクト、照明、ケーブルラックなどとの干渉にも注意が必要です。
自動搬送では、目的地まで運ぶだけでなく、次工程へどのように受け渡すかも重要です。コンベアへ移載するのか、ホイストで降ろすのか、ロボットで設備へ投入するのかによって構成が変わります。
処理能力は、走行速度だけでなく、荷物の受け取り、昇降、走行、荷下ろしまで含めたサイクルタイムで確認します。複数台を運行する場合は、分岐や合流での待ち時間も考慮します。
さらに、将来の設備変更を想定し、レールの延長や分岐、レイアウト変更に対応できるかも確認しておくことが重要です。
天井搬送システムに関するよくある質問

Q1. 天井搬送システムとは何ですか?
天井搬送システムとは、工場や倉庫の上部にレールや走行設備を設置し、材料や製品を搬送する設備です。
方式としては、天井クレーン、ライトクレーン、モノレール、電動モノレール、OHTなどがあります。作業者が操作するものから、完全自動の搬送システムまでさまざまです。
Q2. 天井クレーンとモノレールの違いは何ですか?
主な違いは、搬送装置が移動できる範囲です。
天井クレーンは走行と横行を組み合わせることで、一定の面積をカバーできます。一方、モノレールは基本的に設置されたレールに沿って移動します。
作業エリア内で柔軟に荷物を移動したい場合は天井クレーン、決められた工程間を繰り返し搬送する場合はモノレールが適しています。
Q3. OHTとは何ですか?
OHTは「Overhead Hoist Transport」の略で、天井軌道を自動走行する搬送装置です。
ホイスト機構によって製造装置や保管設備へ荷物を直接受け渡せるため、特に半導体工場で利用されています。
Q4. 天井搬送とAMRはどちらが適していますか?
工場の条件によって異なります。
搬送経路を頻繁に変更する場合や、既存工場へ比較的短期間で追加したい場合はAMRが適していることがあります。
一方、床面に作業者やフォークリフトが多い場合や、重量物を扱う場合は天井搬送が適する可能性があります。搬送重量、床面スペース、建屋条件、レイアウト変更の頻度などを比較して選定します。
Q5. 天井搬送システムは既存工場へ後付けできますか?
既存工場へ後付けできる場合があります。
ただし、建屋の梁や支持構造が設備重量と搬送荷重を支えられるか確認する必要があります。配管、ダクト、照明、ケーブルラックなどとの干渉も事前に確認します。
建屋へ直接取り付けることが難しい場合は、独立架台を設置してレールを支持する方法もあります。
Q6. 協働ロボットは天吊りで使用できますか?
天吊り設置に対応した機種であれば使用できます。
Universal Robots、FANUCのCRXシリーズ、Kassow Robotsなどには、天吊りでの運用が可能な協働ロボットがあります。
天井側に固定するだけでなく、走行軸や天井搬送プラットフォームと組み合わせれば、一台のロボットが複数の作業場所を移動するシステムも構築できます。
ただし、ロボット本体だけでなく、支持構造、走行装置、動的荷重、落下防止、安全範囲などを含めて設計する必要があります。
Q7. 天吊り協働ロボットは造船や重工にも使用できますか?
用途によっては使用できます。
造船や重工では、船体ブロックや大型鋼構造物など、ロボットセルへ移動させにくい大型ワークを扱います。
そこで、天井走行軸などを使って協働ロボット側を移動させれば、ワークを固定したまま広い範囲を作業できます。
溶接、研磨、表面処理、検査など、広い範囲を繰り返し作業する工程で活用が考えられます。一方、船体内部など天井側からアクセスできない場所もあるため、ワーク形状や作業範囲に合わせて他のロボット方式と使い分けることが重要です。
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