医薬品の製造現場では、設備やシステムが要求どおりに設計され、適切に運用できることを確認する必要があります。その際に使われる用語が、クオリフィケーションとベリフィケーションです。
クオリフィケーションは、設備やシステムが意図した用途に使える状態かを確認する活動です。一方、ベリフィケーションは、あらかじめ定めた要求事項を満たしているかを確認します。
製薬GMPでは、さらにバリデーションとの関係や、DQ、IQ、OQ、PQの違いも理解する必要があります。本記事では、クオリフィケーションとベリフィケーションの違いを整理し、適格性評価の進め方や実施時のポイントを解説します。
目次[]
クオリフィケーションとは

クオリフィケーションとは、設備やシステムが要求された能力を備え、意図した用途に使える状態であることを示す活動です。製薬GMPでは、一般に「適格性評価」と呼ばれます。
対象には、製造設備、分析装置、空調設備、製造用水設備などがあります。コンピュータ化システムや付帯設備も、製品品質へ影響する場合は対象になります。
ただし、クオリフィケーションは、設備が動くことだけを確認する活動ではありません。設計が用途に適しているか、正しく据え付けられているか、規定範囲で動作するかを段階的に確認します。
さらに、実際の製造条件で性能を発揮できるかも評価します。これらの確認を体系的に進める考え方が、DQ、IQ、OQ、PQです。
クオリフィケーションの目的

クオリフィケーションの目的は、設備やシステムを製造へ使用できる状態にすることです。単に設備が起動し、動作するだけでは十分ではありません。
例えば、必要な処理能力や温度範囲を満たしていなければ、意図した工程には使用できません。また、仕様どおりに設計されていても、配線や配管が誤っていれば、品質へ影響する可能性があります。
そのため、設計、据付、運転、性能を段階的に確認します。最終的には、試験結果や記録をもとに、設備を使用してよいかを判断します。
ベリフィケーション(検証)とは

ベリフィケーションとは、あらかじめ定めた要求事項が満たされていることを、客観的な証拠で確認する活動です。日本語では、一般に「検証」と訳されます。
医薬品設備では、URS、設計仕様書、図面などが判断基準になります。設備の構成や機能が、それらの要求と一致しているかを確認します。
例えば、配管が図面どおりに施工されているかを確認する作業は、ベリフィケーションに該当します。アラームが設定値で作動するかを試験することも、要求への適合確認です。
ベリフィケーションは試験だけではない
ベリフィケーションは、試験と同じ意味ではありません。試験は、ベリフィケーションに用いる方法の一つです。
ほかにも、文書レビュー、図面照合、計算、解析、現物確認などがあります。例えば、設備能力の計算書を確認し、URSの処理量を満たしているかを評価する方法があります。
また、設計図と実際の配管を照合する作業も含まれます。重要なのは、どの要求を、どの方法で確認したかを明確にすることです。
クオリフィケーションとベリフィケーションの違い

クオリフィケーションとベリフィケーションは、確認する範囲が異なります。ベリフィケーションは、個々の要求への適合を確認する活動です。
一方、クオリフィケーションは、それらの確認結果を積み重ね、設備全体が使用可能な状態かを評価します。
| 比較項目 | クオリフィケーション | ベリフィケーション |
|---|---|---|
| 主な目的 | 設備やシステムが用途に使える状態かを確認する | 規定した要求を満たしているかを確認する |
| 主な対象 | 製造設備、分析装置、付帯設備、システム | 仕様、図面、機能、設定値、試験結果 |
| 判断基準 | URS、設計条件、運転範囲、性能条件 | 要求仕様書、設計仕様書、図面、規格値 |
| 主な方法 | DQ、IQ、OQ、PQ | レビュー、照合、試験、解析、計算 |
| 主な結論 | 設備を意図した用途へ使用できる | 対象の要求が満たされている |
両者は、別々に独立した活動ではありません。実際のクオリフィケーションでは、多数のベリフィケーションを行います。
IQでは、型式や配線を図面と照合します。OQでは、アラームやインターロックが仕様どおりに動くかを確認します。
これらの結果を集め、設備全体の適格性を判断します。つまり、ベリフィケーションは、クオリフィケーションを支える確認活動と考えると理解しやすくなります。
バリデーションとの違い

バリデーションは、意図した用途で期待する結果が得られることを確認する活動です。製薬分野では、設備単体ではなく、製造工程全体の再現性を確認する場面で使われます。
クオリフィケーションでは、設備が正しく設計され、据え付けられたかを確認します。さらに、規定範囲と実運用条件で性能を発揮できるかを評価します。
一方、プロセスバリデーションでは、その設備を使った工程が、規格に適合する製品を継続的に製造できるかを確認します。
| 用語 | 確認する内容 |
|---|---|
| ベリフィケーション | 定めた要求を満たしているか |
| クオリフィケーション | 設備やシステムが用途に使える状態か |
| バリデーション | 工程が意図した結果を再現性よく得られるか |
製薬GMPでは、重要な設備や付帯設備のクオリフィケーションを行ったうえで、プロセスバリデーションへ進むのが基本です。ただし、設備、作業者、原材料、手順を組み合わせて確認する段階では、内容が重なる場合があります。
DQ・IQ・OQ・PQとは
製薬設備のクオリフィケーションは、一般にDQ、IQ、OQ、PQの四段階で進めます。それぞれの段階には、異なる確認目的があります。
| 段階 | 日本語 | 主な目的 |
|---|---|---|
| DQ | 設計時適格性評価 | 設計がURSと用途に適しているかを確認する |
| IQ | 設備据付時適格性評価 | 承認済み設計どおりに据え付けられたかを確認する |
| OQ | 運転時適格性評価 | 規定した運転範囲で意図どおり動くかを確認する |
| PQ | 性能適格性評価 | 実際の使用条件で再現性よく性能を発揮するか確認する |
すべての案件で、四つの文書を完全に分ける必要があるとは限りません。小規模で単純な設備では、複数の段階を統合する場合があります。
ただし、文書をまとめても、各段階で確認すべき目的を失ってはいけません。
DQ|設計時適格性評価
DQでは、設備の設計がURSや意図した用途に適しているかを確認します。URSは、使用者側が設備へ求める内容をまとめた文書です。
DQでは、設備能力、材質、構造、清掃性、保守性、安全機能などを評価します。データを記録する設備では、アクセス管理や監査証跡も重要です。
DQは、設備の購入や製作が進んでから形式的に行うものではありません。設計変更が可能な段階で確認することで、導入後の手戻りを減らせます。
例えば、要求する処理量を設備能力が満たしていない場合、設置後の調整だけでは対応できません。そのため、設計段階で要求と仕様を照合する必要があります。
IQ|設備据付時適格性評価
IQでは、設備が承認された設計や供給者の仕様どおりに据え付けられたかを確認します。設備の型式や製造番号だけではなく、配管、配線、ユーティリティ接続も対象です。
使用部品や材質、センサー位置、ソフトウェアの版なども確認します。さらに、校正証明書や取扱説明書、保守文書がそろっているかを確認します。
図面と現物に差異がある場合は、そのまま次工程へ進めません。差異が品質へ与える影響を評価し、現物または図面を修正します。
なお、校正済みであることはIQの重要な確認項目です。ただし、校正は測定器の値と標準値の関係を確認する活動です。
校正だけで、設備全体の適格性が証明されるわけではありません。
OQ|運転時適格性評価
OQでは、設備が予期した運転範囲で意図どおりに動作するかを確認します。通常の設定値だけではなく、許容範囲の上限と下限も評価します。
例えば、温度を2~8℃で管理する設備では、中間値だけを確認しても不十分です。2℃付近と8℃付近でも、要求する精度で制御できるかを確認します。
また、異常時の動作も重要です。温度上昇やセンサー断線が発生した場合に、規定どおり警報が出るかを確認します。
インターロック、非常停止、停電後の復帰も、設備の用途によって試験対象になります。コンピュータ化された設備では、アクセス権限やデータ保存も確認します。
PQ|性能適格性評価
PQでは、実際または代表的な使用条件で性能を確認します。設備単体の機能ではなく、原材料、製品、作業者、手順を組み合わせて評価します。
例えば、包装設備では、実際の包装材料や製品を使います。最小速度と最大速度など、性能へ影響する条件も考慮します。
また、複数回の運転を行い、結果の再現性を確認します。PQでは、代表条件だけでなく、ワーストケースの設定も重要です。
ただし、最も厳しい条件を機械的に選べばよいわけではありません。品質へ影響する要因を整理し、科学的な根拠によって試験条件を決めます。
PQがOQの繰り返しになっているケースもあります。OQは、設備が規定範囲で機能するかを確認する段階です。
一方、PQは、実運用条件で目的の性能を継続して得られるかを確認します。
クオリフィケーションの進め方

クオリフィケーションは、設備を設置してから試験内容を考えるものではありません。まず、対象設備と意図した用途を定義します。
その後、URSを作成し、品質や安全へのリスクを評価します。リスク評価の結果をもとに、確認する項目と試験の深さを決めます。
重大な品質リスクへ関係する機能には、詳細な試験が必要です。一方、品質へほとんど影響しない項目は、文書確認で対応できる場合があります。
次に、DQ、IQ、OQ、PQの計画書を作成します。計画書には、対象範囲、役割、試験方法、判定基準を記載します。
逸脱が発生した場合の処理方法も、事前に決めておく必要があります。
試験を実施した後は、結果を報告書へまとめます。基準を満たさない項目があれば、原因と影響を評価します。
必要な是正を行い、根拠を明確にしたうえで再試験します。最後に、すべての結果を確認し、設備の使用可否を承認します。
URSが重要になる理由
URSは、クオリフィケーション全体の基準になる文書です。設備へ求める内容が曖昧では、DQやOQの判定基準も曖昧になります。
例えば、「十分な能力を持つこと」という要求では、合否を判断できません。処理量、速度、温度範囲、許容差などを具体的に記載する必要があります。
また、性能要求だけでなく、安全や保守に関する要求も重要です。設備を洗浄できる構造か、故障時に安全に停止するかなどを確認します。
データを記録する設備では、保存期間やアクセス権限も記載します。要求には識別番号を付け、設計や試験と対応させる方法が有効です。
要求、設計、試験、結果を追跡できれば、未確認項目を見つけやすくなります。
判定基準は事前に決める
クオリフィケーションでは、判定基準を試験前に承認する必要があります。試験結果を確認してから基準を決めると、結果に合わせた評価になるためです。
例えば、「正常に動作すること」という基準では、担当者によって判断が変わります。一方、「設定温度2~8℃の範囲で、規定精度内に維持すること」と記載すれば、客観的に判定できます。
警報についても、「異常時に警報が出ること」だけでは不十分です。どの条件で警報が出るのか、何秒以内に作動するのかを明確にします。
試験条件、測定方法、許容値まで定義することで、結果の再現性を高められます。
FAT・SATの結果は活用できるか

設備導入では、供給者工場でFATを行う場合があります。また、設備の設置後には、使用場所でSATを実施します。
FATやSATの結果は、条件を満たせばIQやOQの証拠として活用できます。ただし、供給者の試験をそのまま採用できるとは限りません。
自社のURSと試験内容が対応しているかを確認します。試験環境、設備構成、ソフトウェア版も重要です。
輸送や据付によって変化する項目は、現地で再確認する必要があります。例えば、供給者工場で確認した配線状態は、現地での再接続後に変わる可能性があります。
そのため、FATで合格していても、IQで現物確認が必要です。
逸脱が発生した場合の対応
試験結果が判定基準を満たさない場合は、逸脱として記録します。結果が悪かったからといって、最初のデータを消してはいけません。
まず、何が起きたかを記録します。その後、設備不具合、試験方法、操作ミスなどの原因を調査します。
さらに、製品品質や試験結果へ与える影響を評価します。是正後に再試験する場合は、再試験の対象と理由を明確にします。
試験全体をやり直すのか、影響する項目だけを再確認するのかを判断します。逸脱を適切に管理することで、試験結果の信頼性を維持できます。
クオリフィケーションは一度で終了しない
設備がクオリフィケーションに合格しても、その状態が永久に続くわけではありません。使用中には、部品交換や設定変更が発生します。
ソフトウェアの更新や設備移設が行われる場合もあります。また、長期間の使用によって、性能が徐々に変化することもあります。
そのため、校正、点検、保守、性能傾向を継続的に管理します。変更が発生した場合は、適格状態への影響を評価します。
すべての変更で、DQからPQまでを全面的にやり直す必要はありません。例えば、据付条件だけに影響する変更であれば、IQを中心に確認します。
運転条件へ影響する場合は、OQも必要です。製品品質や工程性能へ影響する変更では、PQや再バリデーションを検討します。
重要なのは、試験を実施したかだけではありません。どの範囲を再評価したか、その判断根拠を変更管理記録へ残す必要があります。
クオリフィケーションでよくある失敗

クオリフィケーションでは、設備導入後に記録を整えるだけの運用になりやすい点へ注意が必要です。本来、URSや判定基準は試験前に作成しなければなりません。
設備が完成した後にDQを作成すると、既存の仕様を正当化する文書になりやすくなります。
また、供給者の標準プロトコルをそのまま使うケースもあります。標準プロトコルには、自社の製品や使用条件が反映されていない場合があります。
供給者試験を活用する際は、URSとリスク評価へ対応しているかを確認します。
通常条件だけを試験することも、よくある問題です。設備は通常運転時だけでなく、上下限や異常時にも適切に動作する必要があります。
ただし、試験数を増やすこと自体が目的ではありません。要求とリスクに基づき、必要な条件を選定することが重要です。
クオリフィケーションとベリフィケーションでよくある質問

クオリフィケーションとは何ですか
設備やシステムが要求された能力を備え、意図した用途へ使用できる状態かを確認する活動です。製薬GMPでは、DQ、IQ、OQ、PQの段階で実施する場合が一般的です。
ベリフィケーションとは何ですか
ベリフィケーションとは、設計や機能が定めた要求事項を満たしているかを確認する活動です。試験だけではなく、レビュー、解析、計算、図面照合なども含まれます。
IQ、OQ、PQの違いは何ですか
IQは、承認済みの設計どおりに据え付けられたかを確認します。OQは、予期した運転範囲で意図どおりに動くかを確認します。
PQは、実際または代表的な運用条件で、再現性よく性能を発揮するかを確認します。
OQとPQは統合できますか
対象が小規模で、確認事項が重なる場合は統合できることがあります。ただし、機能と運転範囲を確認するOQと、実運用性能を確認するPQでは目的が異なります。
統合する場合も、両方の確認事項が満たされる計画が必要です。
FATやSATをIQ・OQへ利用できますか
FATやSATの結果は、条件を満たせば利用できます。試験対象、環境、版数、使用機器、判定基準が明確であることが必要です。
また、自社のURSとリスクに対応しているかを確認します。輸送や据付後に変化する項目は、現地で再確認する必要があります。
設備を移動したらすべて再実施しますか
必ずしもDQ、IQ、OQ、PQをすべて再実施する必要はありません。移動による影響を評価し、必要な範囲を決めます。
据付条件だけが変わる場合は、IQを中心に確認します。性能へ影響する場合は、OQやPQも検討します。
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