超音波探傷とは?仕組み・種類・メリット・自動化事例を解説

超音波探傷とは?仕組み・種類・メリット・自動化事例を解説

お役立ち情報 2026.08.05

製品や溶接部の内部には、外観から確認できないきずが生じる場合があります。しかし、内部を確認するために製品を切断すると、検査後は使用できません。

超音波探傷は、対象物を壊さずに内部を調べる非破壊検査です。鋼材や溶接部のほか、配管、鋳造品、鍛造品、複合材などにも利用されています。

一般的なパルス反射法に加えて、フェーズドアレイUTやTOFDによる画像化も行われています。さらに、ロボットや専用スキャナを使い、探触子の走査を自動化する設備もあります。

本記事では、超音波探傷の仕組み、検査できるもの、主な種類を解説します。メリットと注意点に加えて、自動化に必要な構成や公開事例も紹介します。

超音波探傷とは

超音波探傷とは

超音波探傷とは、材料内部へ超音波を送り、戻ってきた信号から内部の状態を調べる検査方法です。

英語では「Ultrasonic Testing」と呼ばれ、一般にUTと略されます。

材料表面に探触子と呼ばれるセンサーを当てると、内部へ超音波が伝わります。きずや異なる材質の境界がある部分では、超音波の一部が反射します。

探傷器は、反射波が戻るまでの時間や信号の大きさを測定します。その結果から、きずの位置や材料内部の状態を評価します。

非破壊検査とは

非破壊検査とは、製品や構造物を壊さずに、表面や内部の状態を調べる検査の総称です。

英語では「Non-Destructive Testing」と呼ばれ、NDTと略されます。

検査後も対象物を使用できるため、製造工程の品質確認に利用されています。稼働中の設備や、大型構造物の保守点検にも用いられます。

これに対して、破壊検査では製品を切断し、断面や内部組織を直接確認します。詳細な観察が可能ですが、検査した製品をそのまま出荷することはできません。

超音波探傷は、非破壊検査の一つです。主に材料内部のきずや、板厚の確認に使用されます。

超音波探傷試験について

超音波探傷試験(UT)は、対象物の内部へ超音波を送り、戻ってきた反射波から内部の状態を調べる検査方法です。

一般的なパルス反射法では、探触子から超音波を送信します。材料内部にきずや異なる材質の境界があると、超音波の一部が反射し、再び探触子へ戻ります。

探傷器は、反射波が戻るまでの時間と信号の大きさを測定します。反射時間からきずまでの距離を推定し、信号の大きさや波形から内部の状態を評価します。

超音波探傷試験の仕組み

探触子の内部には、圧電素子と呼ばれる部品があります。圧電素子は、探傷器から送られた電気信号を超音波へ変換し、戻ってきた超音波を電気信号へ戻します。

材料内部を進んだ超音波は、きず、介在物、接合面、材料の底面などで反射します。受信した信号は、探傷器の画面に波形や画像として表示されます。

ただし、溶接余盛、裏当て金、段差、穴などの製品形状からも反射波が発生します。そのため、形状による反射と、きずによる反射を区別する必要があります。

超音波探傷試験で分かること

超音波探傷試験では、き裂、未融合、溶込み不良、介在物、鋳巣、気泡、空隙、剥離、接着不良などを検出対象とします。

反射波が戻るまでの時間から、きずの深さや位置を推定できます。探触子の走査位置も記録すれば、きずの分布を断面や平面の画像として表示することも可能です。

また、超音波が材料の表面と底面を往復する時間から、配管やタンクなどの板厚を測定できます。複数の位置を連続して測定すれば、腐食や減肉の分布、板厚の経年変化も確認できます。

ただし、検出しやすさや測定精度は、きずの向き、材質、表面状態、探触子、周波数、校正条件によって変わります。画面に表示された振幅や画像だけで、きずの実際の寸法を直接判断することはできません。

超音波探傷でカプラントを使用する理由

カプラントを使用する理由
https://ureruzo.com/thickness-op.htm

接触式の超音波探傷試験では、探触子と対象物の間にカプラントと呼ばれる液体を塗布します。

探触子と対象物の間に空気が残ると、超音波の多くが表面で反射し、材料内部へ伝わりにくくなります。カプラントを使用することで空気の層を減らし、超音波を安定して伝えます。

カプラントには、水、油、グリセリン、専用ゲルなどが用いられます。自動検査設備では、供給量に加えて、気泡や液温も管理します。

超音波探傷で検査できるもの

超音波探傷で検査できるもの
画像出典:https://www.daiken-ndt.co.jp/tyouonpa

超音波探傷試験(UT)は、鋼材、溶接部、配管、圧力容器、タンク、橋梁などの内部きずを確認する検査として広く用いられます。製造工程の品質検査だけでなく、稼働中の設備や構造物の保守点検にも利用されています。

代表的な検査対象と確認内容は、次のとおりです。

検査対象製品・構造物の例主な確認内容
鋼材鋼板、丸棒、鋼管介在物、内部きず、板厚
溶接部橋梁、建築鉄骨、プラント配管き裂、未融合、溶込み不良
配管・圧力設備配管、タンク、圧力容器溶接きず、腐食、減肉
鋳造品・鍛造品鋳物部品、軸、リング鋳巣、気泡、介在物、内部きず
機械部品ボルト、車軸、大型部品疲労き裂、内部の不連続部
スポット溶接部自動車車体、板金部品接合状態、溶接範囲
複合材・接着部航空部品、積層パネル剥離、空隙、接着不良

主な対象は鋼やアルミニウムなどの金属ですが、セラミックス、ガラス、樹脂、複合材にも利用されます。内部きずの検出に加えて、板厚や寸法、膜厚の測定、材質評価、液体中の異物検出などにも活用されています。

ただし、鋳鉄や粗粒材、オーステナイト系ステンレス、複合材では、超音波の散乱や減衰によって検出が難しくなる場合があります。材質、厚さ、形状、表面状態に合わせて検査条件を設定することが重要です。

超音波探傷の主な種類

超音波探傷には、探触子の配置や信号処理が異なる複数の方式があります。

代表的な方式を次の表に整理します。

種類仕組み主な特徴
パルス反射法反射した超音波を同じ側で受信する片側から検査でき、深さを求めやすい
透過法対象物を挟んで送信側と受信側を置く剥離や接着不良の広域検査に適する
フェーズドアレイUT多数の素子を時間差で動作させる角度や焦点を電子制御できる
TOFDき裂端部からの回折波を測定するきずの高さを評価しやすい
FMC/TFM多数の送受信データから画像を作る広い範囲へ焦点を合わせられる

各方式には、適用しやすい検査対象と制約があります。

一つの方式だけで必要な範囲を検査できない場合は、複数の方式を組み合わせます。

パルス反射法

パルス反射法は、超音波探傷で広く使用される方式です。

探触子から超音波を送り、きずや底面から戻る反射波を同じ側で受信します。

対象物の片側から検査できるため、裏面へ入れない製品や構造物にも適用しやすい方法です。

反射時間から、きずまでの距離や板厚を推定できます。

一方、きず面と超音波の進行方向が平行に近い場合は、反射波が探触子へ戻りにくくなります。

透過法

透過法では、対象物の一方に送信探触子を置きます。反対側には、超音波を受信する探触子を配置します。

きずや剥離がある部分では、透過する超音波が弱くなります。その変化から、内部の異常を検出します。

複合材や接着部の広域検査に適しています。

ただし、対象物の両側からアクセスする必要があります。また、単純な配置では、きずの深さを特定しにくい点も制約です。

垂直探傷と斜角探傷

超音波を入射する方向によって、垂直探傷と斜角探傷に分けられます。

垂直探傷では、対象物の表面に対して、おおむね垂直方向へ超音波を送ります。鋼板や鍛造品の内部きず、板厚の測定などに用いられます。

斜角探傷では、材料内部へ斜め方向に超音波を送ります。溶接部や、特定方向のきずを検出する場合に使用されます。

きずを検出するには、超音波がきず面で反射し、探触子へ戻る必要があります。

そのため、想定するきずの向きに合わせて、入射方向を選ぶことが重要です。

フェーズドアレイUT(PAUT)

フェーズドアレイUTは、複数の小さな振動素子を並べた探触子を使用します。

一般に、PAUTと略されます。

各素子を動作させる時間を調整することで、超音波の角度や焦点位置を電子的に制御します。

一つの探触子で、複数角度のデータを取得できる点が特徴です。溶接部を広い角度範囲で確認する場合にも使われます。

検査結果を断面画像として表示しやすく、反射源の位置関係を把握しやすくなります。

ただし、各素子の状態や、くさびの遅延時間を確認する必要があります。焦点条件や表示範囲によって、検出性能も変化します。

画像が鮮明に見えても、必要なきずを検出できるとは限りません。実材に近い試験片を使った確認が必要です。

TOFD

TOFDは「Time of Flight Diffraction」の略です。

一般的には、溶接部を挟むように送信探触子と受信探触子を配置します。

き裂の上端と下端から発生する回折波を測定し、到達時間から高さ方向を評価します。

振幅だけに依存しにくいため、きずの高さを評価する方法として用いられます。

ただし、表面付近と底面付近には、きずを分離しにくい範囲があります。

そのため、PAUTやパルス反射法などと組み合わせて使用する場合があります。

FMC/TFM

FMCは「Full Matrix Capture」の略です。

アレイ探触子にある各素子について、送信と受信の組み合わせを記録します。

TFMは「Total Focusing Method」の略です。FMCで取得したデータを使い、画像内の各位置へ焦点を合わせた画像を再構成します。

広い範囲で集束した画像を得られる点が特徴です。

一方で、取得するデータ量と演算量が大きくなります。再構成する範囲や画素数によって、処理時間も変化します。

また、再構成条件によって表示結果が変わる場合があります。

検査結果とあわせて、ソフトウェアの版や処理条件も記録することが重要です。

超音波探傷のメリット

超音波探傷のメリット

超音波探傷は、対象物を壊さずに内部を確認できる検査方法です。片側から検査できる方式があり、結果をデータとして保存できる点も利点です。

製品を壊さず、片側から内部を検査できる

対象物を切断しないため、検査後も製品や設備を使用できます。量産品の全数検査や、稼働中設備の保守点検にも利用できます。

一般的なパルス反射法では、対象物の片側から検査できます。そのため、裏側へ入れない配管、タンク、大型構造物にも適用しやすい方法です。

適切な探触子と周波数を選べば、厚板や大型部品の内部も検査できます。ただし、探触子を当てられる範囲や、材料内部での超音波の減衰を確認する必要があります。

きずの位置を推定し、結果を記録できる

反射波が戻るまでの時間から、きずまでの距離を推定できます。走査位置と組み合わせれば、指示が検出された位置や分布も記録できます。

デジタル探傷器では、波形や画像、装置設定を保存できます。過去の検査結果と比較できるため、品質傾向の管理やトレーサビリティにも活用できます。

ただし、正確な位置を求めるには、材料の音速や探触子の条件に合わせた校正が必要です。

自動走査へ展開できる

ガントリ、専用スキャナ、ロボットなどを組み合わせれば、探触子の移動を自動化できます。走査速度や測定ピッチをそろえやすくなり、広い範囲を連続して検査できます。

波形と位置情報を同期すれば、検査結果の画像化や自動保存も可能です。

ただし、安定した検査には、探触子の角度、押付け力、カプラントの状態も管理する必要があります。

超音波探傷のデメリットと注意点

超音波探傷のデメリットと注意点

超音波探傷の検出性能は、きずの向きや材料の性質、表面状態によって変わります。装置の仕様だけで判断せず、対象物に合った検査条件と校正方法を設定することが重要です。

きずの向きや表面状態に左右される

超音波は、きず面で反射した信号が探触子へ戻ることで検出されます。そのため、超音波の進行方向と平行に近いきずは、大きくても信号が小さくなる場合があります。

また、錆、塗膜、油、表面粗さ、段差、曲率なども、超音波の伝わり方に影響します。必要に応じて検査面を清掃し、想定するきずの向きに合わせて複数方向から走査します。

材質や深さによって検出しにくい場合がある

鋳鉄や粗粒材では、材料内部で超音波が散乱し、きずの信号がノイズに埋もれる場合があります。複合材や樹脂でも、超音波の減衰が大きく、深部まで届きにくいことがあります。

また、表面付近では送信パルスの影響により、浅いきずを分離しにくい場合があります。対象に応じて、周波数を下げるほか、二振動子探触子や遅延材付き探触子を検討します。

評価と精度確認に専門知識が必要

探傷器には、きずだけでなく、底面や溶接形状からの反射も表示されます。そのため、波形や画像から反射源を判断するには、検査方法や対象物に関する知識が必要です。

PAUTやTFMで鮮明な画像が得られても、表示の細かさが測定精度を保証するわけではありません。音速、入射角、走査ピッチ、校正状態などが結果に影響します。

必要な検出性能と測定精度は、実材に近い基準試験片を使って確認します。適用規格や顧客仕様によっては、検査員の資格や力量も求められます。

超音波探傷方法を選ぶ際のポイント

超音波探傷方法を選ぶ際のポイント
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超音波探傷の方法は、装置の性能だけで決めることはできません。検出したいきずの種類、向き、位置、深さを整理し、対象物に合った探触子や周波数を選定します。

材質や板厚、表面状態、曲率も検出性能に影響します。特に、曲面や段差がある製品では、探触子を安定して接触させられるか確認が必要です。

周波数が高いほど、小さなきずを分離しやすくなります。一方、周波数が低いほど、厚板や減衰の大きい材料の深部まで届きやすくなります。

周波数主な特徴適用しやすい条件
高い微細な反射を分離しやすい薄板、微小きず
低い深部まで届きやすい厚板、粗粒材

選定後は、実材に近い基準試験片を使い、必要なきずを検出できるか確認します。あわせて、適用する規格や顧客仕様に基づき、校正方法、検査範囲、合否基準を決めることが重要です。

超音波探傷に関するよくある質問

超音波探傷に関するよくある質問

超音波探傷では、すべての内部きずを検出できますか?

すべてのきずを同じ条件で検出できるわけではありません。特に、超音波と平行に近いきずは、反射が探触子へ戻りにくくなります。

複数角度からの走査や、PAUTとTOFDの併用を検討します。実材に近い試験片で、検出性能を確認することも必要です。

超音波の周波数は、高いほどよいですか?

高いほどよいとは限りません。高周波は細かな反射を分離しやすい一方で、材料内部での減衰や散乱が増えます。

厚板や粗粒材では、低い周波数が適する場合があります。必要な分解能とS/N比から選定します。

超音波探傷と超音波厚さ測定は同じですか?

利用する原理には共通点がありますが、検査の目的が異なります。厚さ測定は、主に表面と底面の反射から厚さを求めます。

超音波探傷では、材料内部のきずや不連続部を検出します。必要な装置設定や評価方法も異なります。

超音波探傷には、必ずカプラントが必要ですか?

一般的な接触式探傷では、カプラントを使用します。探触子と対象物の間にある空気を減らすためです。

EMAT、空中超音波、レーザー超音波など、カプラントを使わない方式もあります。ただし、適用できる材質や設備条件が異なります。

塗装された製品でも超音波探傷はできますか?

塗膜を残した状態で検査できる場合もあります。ただし、塗膜の厚さや状態は、超音波の伝達や測定位置へ影響します。

事前に同等条件の試験片で確認し、必要に応じて感度や音速を補正します。検査規格や顧客仕様によっては、塗膜除去が必要です。

超音波探傷を自動化すれば、有資格者は不要ですか?

自動化しても、有資格者が不要になるとは限りません。手順作成、校正、例外処理、結果承認には専門知識が求められます。

必要な資格や担当範囲は、適用規格と顧客仕様に基づいて決めます。

iCOM技研による導入サポート|超音波探傷の自動化導入の「壁」を取り除く

超音波探傷の自動化では、ロボットやスキャナを選ぶだけでは十分ではありません。対象物の形状や検出したいきずに合わせて、探触子の姿勢、押付け力、走査経路、カプラント供給などを設計する必要があります。

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