SCADAとは?DCS・MESとの違い、仕組み、メリット・デメリットを解説

SCADAとは?DCS・MESとの違い、仕組み、メリット・デメリットを解説

お役立ち情報 2026.08.04

SCADAは、工場やインフラ設備から運転データを収集し、設備の状態を一元的に監視するシステムです。警報の表示や履歴保存、遠隔操作にも対応し、複数設備の運用管理に利用されています。

一方、SCADAはPLCやHMI、DCS、MESと機能が重なる部分もあります。自社に必要なシステムを判断するには、それぞれの役割や管理対象を理解することが重要です。

本記事では、SCADAの意味や仕組み、DCS・MESとの違いを解説します。日本で名称が広く浸透していない背景や、導入するメリット・デメリットについても紹介します。

SCADAとは

SCADAとは

SCADAは「Supervisory Control and Data Acquisition」の略です。日本語では「監視制御・データ収集システム」と呼ばれます。

工場やインフラ設備から運転データを収集し、中央の監視画面へ表示するシステムです。設備の異常を警報で知らせるほか、計測値や操作履歴を保存します。

SCADAが扱う代表的な情報は、次のとおりです。

  • 設備の運転・停止状態
  • 温度、圧力、流量、電流などの計測値
  • 生産数、処理量、サイクルタイム
  • モーター、ポンプ、バルブの状態
  • 異常や警報の発生状況
  • 消費電力やエネルギー使用量
  • 操作履歴や設定変更履歴
  • PLCや通信機器の接続状態

SCADAは、特定の一台の装置を指す名称ではありません。センサー、PLC、通信ネットワーク、サーバー、監視画面、データベースなどを組み合わせたシステム全体を指します。

設備に近い場所で行う高速制御やインターロックは、主にPLCやRTUが担当します。これらの制御装置から情報を集約し、複数設備の状態を上位から監視するのがSCADAです。

SCADAの主な役割・機能

SCADAの主な役割・機能

SCADAの主な役割は、設備の状態を一元的に監視し、運転に必要な情報を管理することです。基本機能として、設備監視、警報管理、履歴保存、遠隔操作があります。

監視画面には、工場全体や生産ラインごとの稼働状況を表示できます。異常が発生した設備を選択し、警報内容や計測値を詳しく確認する構成も可能です。

設備データは、ヒストリアンと呼ばれる時系列データベースへ保存します。異常発生前後の温度や電流を比較することで、設備停止や品質不良の原因調査に活用できます。

権限を持つ運転員が、SCADAから設備へ運転や停止の指令を送る構成もあります。ただし、安全に関わる処理やインターロックは、PLCや安全制御機器側に残すことが基本です。そのため、上位監視システムや通信に障害が発生しても、設備を安全な状態へ移行できる設計が求められます。

SCADAとDCS・MESの違い

SCADAとDCS・MESの違い

SCADA、DCS、MESはいずれも、工場やプラントの運用を支えるシステムです。ただし、監視する対象や担当する業務は異なります。

SCADAは、複数設備から運転データを収集し、設備状態や警報、履歴を管理します。DCSは、主にプラント内の連続工程を制御するシステムです。MESは、生産指示や製造実績、品質、工程進捗などの製造業務を管理します。

簡単に整理すると、SCADAは「設備の状態」、DCSは「工程の制御」、MESは「製造業務」を扱うシステムです。

SCADAとDCSの違い

DCSは「Distributed Control System」の略です。日本語では「分散制御システム」と呼ばれます。

一般にDCSは、化学、石油、製薬、発電などのプラントで使用されます。温度、圧力、流量などを連続して計測し、工程全体を安定させるための制御を行います。

これに対してSCADAは、複数のPLCや遠隔設備から情報を集め、設備全体を監視する用途に適しています。上下水道、電力、交通、複数工場の監視などが代表例です。

SCADAは、通信遅延や回線断が起こる可能性を考慮しながら、広域に分散した設備を監視する傾向があります。DCSは、一つの工場やプラント内で、連続工程を高密度に制御する用途を得意とします。

ただし、現在は両者の機能が重なっています。DCSが遠隔設備を監視する場合もあれば、SCADAが一つの工場内で使用される場合もあります。

名称だけで判断するのではなく、必要な制御周期、設備の分散範囲、通信断時の動作、システムが担当する範囲を確認することが重要です。

SCADAとMESの違い

MESは「Manufacturing Execution System」の略です。日本語では「製造実行システム」と呼ばれます。

SCADAが主に設備の状態を扱うのに対し、MESは工場内の製造業務を管理します。生産指示、工程の進捗、製造実績、品質、ロット、作業者などが主な管理対象です。

例えば、SCADAは設備から生産数や停止時間を収集します。MESは、その実績を生産計画と比較し、予定数量に対する進捗や遅れを管理します。

両者は、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。SCADAで収集した設備データをMESへ送り、生産計画や品質情報と組み合わせる構成もあります。

製造ラインが停止した場合、SCADAは停止時刻や警報、計測値を記録します。MESは、その停止が生産計画や納期へ与える影響を管理します。

つまり、SCADAは設備側の情報を扱い、MESは製造業務側の情報を扱います。連携によって、設備の状態と生産の進捗をまとめて確認しやすくなります。

工場内における各システムの役割

工場内では、PLC、HMI、SCADA、MES、ERPが階層ごとに役割を分担します。

現場に近いPLCは、機械や設備を直接制御します。HMIは、運転員が設備状態を確認し、操作するための画面です。

SCADAは、複数のPLCやHMIから設備情報を集め、監視、警報、履歴管理を行います。その上位にあるMESは、生産指示、製造実績、品質、工程を管理します。

ERPは、受注、在庫、購買、原価、会計など、企業全体の業務を扱うシステムです。

SCADAとDCS・MESの違い

画像では、現場設備から経営管理までの流れを、PLC、HMI、SCADA、MES、ERPの順に整理します。上位へ進むほど、設備の個別制御から工場全体、企業全体の管理へ対象が広がります。

SCADAを導入する際は、すでに使用しているHMIやMESの機能を確認する必要があります。機能が重複すると、同じデータを複数のシステムで管理することになり、保守や変更作業が複雑になります。

SCADAが日本であまり普及していない理由

SCADAは、日本で使われていないわけではありません。電力、上下水道、交通、プラントなどでは、以前から設備監視に利用されています。

製造業では、工場監視システムや設備稼働監視システムなど、別の名称で導入される場合があります。設備ごとにPLCとHMIを設置する構成も定着しており、「SCADA」という名称が表に出にくいのが実情です。

既存工場では、新旧のPLCや異なる通信方式が混在しています。接続にはゲートウェイや設備改造が必要となり、費用や設備停止が課題になる場合があります。

さらに、導入効果を得るには、収集したデータを改善や保全へ活用する運用が必要です。そのため、日本では普及していないというより、別名称や個別構成で導入されていると考える方が適切です。

SCADAの仕組み

SCADAの仕組み

SCADAでは、現場の設備から取得した情報を、通信ネットワークを通じてサーバーへ集めます。

基本的な流れは、計測、収集、通信、表示、保存の順です。

段階主な処理
1.計測センサーや計測器が設備の状態を測定する
2.収集・制御PLCやRTUが信号を取り込み、設備を制御する
3.通信PLCやRTUのデータをSCADAへ送信する
4.監視・警報SCADAサーバーがデータを処理して画面へ表示する
5.保存・活用履歴を保存し、分析や帳票へ利用する

1.センサーや計測器が状態を測定する

最初に、センサーや計測器が設備の状態を測定します。

温度、圧力、流量、電流、電圧、振動などが代表的な計測項目です。近接センサーや光電センサーから、ワークの有無や通過情報を取得することもあります。

必要なデータは、SCADAの導入目的によって異なります。停止原因を調査したい場合は、運転信号だけでなく、停止理由を判断できる異常信号や工程情報も必要です。

2.PLCやRTUがデータを収集する

センサーからの信号は、PLCやRTUへ入力されます。

PLCは、入力信号と制御プログラムに従い、モーター、シリンダー、バルブなどを動作させます。工場内の機械や生産ラインでは、PLCが多く使われています。

RTUは「Remote Terminal Unit」の略です。遠隔設備のデータ収集、通信、簡易制御を行う装置で、上下水道や電力設備などで使用されます。

3.通信ネットワークでSCADAへ送る

PLCやRTUが保有するデータは、通信ネットワークを通じてSCADAへ送られます。

工場内ではEthernetや産業用ネットワークが使われます。遠隔設備では、専用線、光回線、LTE、産業用無線なども選択肢です。

代表的な通信・データ連携規格には、Modbus、OPC UA、MQTT、DNP3、IEC 60870-5-104などがあります。

通信方式を選ぶ際は、接続可否だけでなく、更新周期、通信断時の再送、時刻情報、認証、暗号化も確認します。

4.SCADAサーバーがデータを処理する

SCADAサーバーは、複数のPLCやRTUから情報を収集します。

受信したデータは、設備状態の表示、警報判定、操作指令などに使用されます。異常値を検出した場合は、監視画面へ警報を表示します。

サーバーが停止した場合でも、PLCが現場制御を継続できる構成が基本です。高速制御や安全制御を、SCADAサーバーへ依存させないように設計します。

5.HMIへ設備状態を表示する

収集した情報は、HMIと呼ばれる監視・操作画面へ表示されます。

HMIは「Human Machine Interface」の略です。運転員は画面から、設備の運転状態、計測値、警報などを確認します。

権限が設定されている場合は、設備の運転・停止や設定値の変更も行えます。誤操作を防ぐため、閲覧、運転操作、設定変更の権限を分けることが重要です。

6.ヒストリアンへ履歴を保存する

長期間保存する設備データは、ヒストリアンへ記録されます。

ヒストリアンとは、時刻とともに変化する情報を保存する時系列データベースです。温度、圧力、生産数、電力使用量などを継続して記録します。

保存した情報は、トレンドグラフ、帳票、停止原因の分析、設備保全などに利用されます。

SCADA導入のメリット

SCADA導入のメリット

SCADAを導入すると、褗数設備の情報を一か所へ集約できます。設備監視の効率化だけでなく、異常対応や原因分析、帳票作成にも活用できます。

複数設備を一元的に監視できる

工場内の設備や生産ラインを、一つの画面から監視できます。運転・停止状態、計測値、警報などをまとめて確認できるため、設備ごとに操作画面を確認する手間を減らせます。

複数の建屋や遠隔拠点を管理する場合にも有効です。異常の発生場所や内容を事前に把握できれば、現地へ向かう担当者や必要な部品を判断しやすくなります。

ただし、遠隔操作まで行う場合は、操作権限や通信経路を適切に管理する必要があります。

異常対応と停止原因の調査を進めやすい

設備の異常や計測値の変化を、警報として運転員へ知らせます。現場を巡回する前に異常箇所を確認できるため、初動対応を早めやすくなります。

温度、圧力、電流、設備状態などを時系列で保存すれば、異常発生前後の変化を比較できます。停止理由を分類して集計することで、発生回数や停止時間の多い原因も整理できます。

SCADAが自動的に原因を特定するわけではありません。分析に必要なセンサーとデータを、導入前に決めておくことが重要です。

記録や帳票作成を省力化できる

SCADAで収集したデータから、日報、月報、生産実績、設備稼働率などを作成できます。

手書き記録や表計算ソフトへの転記を減らし、記入漏れや集計方法のばらつきを抑えやすくなります。製造履歴を一定の形式で保存できる点も利点です。

もっとも、帳票の正確性は元になるデータに左右されます。センサーの校正、タグの定義、集計条件が適切であることが前提です。

設備データを生産管理や改善活動へ活用できる

収集したデータは、MES、保全システム、品質管理システムなどへ連携できます。

例えば、生産数をMESへ送り、異常履歴を保全システムへ登録する構成です。設備の状態と生産計画、品質、保全履歴を組み合わせることで、工程改善に必要な情報を整理しやすくなります。

標準的な通信方式に対応した製品であれば、設備追加や上位連携を進めやすい場合があります。パッケージ製品を利用することで、個別開発の範囲を抑えられるケースもあります。

ただし、SCADA製品や接続対象によって必要な開発量は異なります。導入費用が常にDCSや個別システムより安くなるとは限りません。

SCADA導入のデメリット

SCADA導入のデメリット

SCADAには、いくつかのメリットがあります。一方で、既存設備との接続やセキュリティ対策には、費用と設計工数が必要です。導入後の保守やシステム停止時の運用も含めて検討しなければなりません。

初期費用と設計工数がかかる

SCADAの導入には、ソフトウェアライセンス以外の費用も発生します。

サーバー、ネットワーク、通信ドライバ、画面、タグ、警報、帳票などの設計が必要です。既存PLCの改造や通信ユニットの追加が必要になる場合もあります。

小規模な設備監視では、SCADAが機能的に過剰になる可能性があります。監視対象が少ない場合は、HMIや小規模なIoTシステムも含めて比較する必要があります。

古い設備や異なるシステムとの接続が難しい場合がある

SCADAは、すべての設備とそのまま通信できるわけではありません。

古いPLC、専用通信、通信機能を持たない設備では、ゲートウェイや外付けセンサーが必要になることがあります。取得できる情報が、運転・停止などの一部に限られる場合もあります。

MESや在庫管理システムと連携する際も、データ形式や通信プロトコルの違いが課題になります。必要なデータ、更新周期、受け渡し方法を事前に確認することが重要です。

サーバーや通信障害の影響を受ける

SCADAサーバーや通信回線が停止すると、中央監視、履歴保存、帳票作成などが利用できなくなる可能性があります。

現場の制御はPLC側で継続し、SCADA停止時にも設備を安全な状態へ移行できる設計が必要です。重要設備では、サーバーだけでなく、ネットワーク機器、通信回線、電源を含めて冗長化を検討します。

セキュリティ対策と継続的な保守が必要になる

SCADAを社内ネットワークやクラウドへ接続すると、データを活用しやすくなります。一方で、不正アクセスを受ける経路が増える可能性があります。

ネットワーク分離、個人別アカウント、多要素認証、操作履歴、バックアップなどの対策が必要です。初期パスワードや常時開放された遠隔保守回線は、優先して見直します。

SCADAの監査ログや権限管理は、不正操作の把握に役立ちます。ただし、SCADAを導入するだけでセキュリティが高まるわけではありません。

導入後も、設備追加に伴うタグ変更や、OS、データベース、通信ドライバの更新が発生します。バックアップを取得するだけでなく、定期的に復元できるか確認することも重要です。

SCADAは、設備データを収集し、改善に使うための基盤です。停止時間の削減や帳票作成の省力化など、導入目的と評価指標を決めたうえで運用する必要があります。

SCADAに関するよくある質問

SCADAに関するよくある質問

Q1.SCADAは何の略ですか?

SCADAは「Supervisory Control and Data Acquisition」の略です。

日本語では「監視制御・データ収集システム」と呼ばれます。設備データの収集、状態監視、警報、履歴管理などを行うシステムです。

Q2.SCADAとPLCはどちらが必要ですか?

多くの設備では、SCADAとPLCの両方を使用します。

PLCは機械や設備を直接制御し、SCADAは複数のPLCから情報を収集します。高速制御や安全制御はPLC側で行い、SCADAは設備全体の監視を担当します。

Q3.SCADAが停止すると設備も停止しますか?

設備が停止するかどうかは、システム構成によって異なります。

PLCが現場制御を継続する構成であれば、SCADAが停止しても運転を続けられる場合があります。ただし、中央監視、遠隔操作、履歴保存などは利用できなくなる可能性があります。

Q4.古い設備にもSCADAを接続できますか?

接続可否は、PLCの機種や通信方式によって異なります。

通信ユニットやゲートウェイを追加するほか、外付けセンサーからデータを取得する方法もあります。事前に設備の型式、通信仕様、取得したい情報を確認する必要があります。

Q5.SCADAの導入費用は何で決まりますか?

導入費用は、接続する設備数、タグ数、画面数、通信方式などによって変わります。

サーバー、通信ドライバ、既存設備の改造、ネットワーク工事、帳票作成、冗長化、セキュリティ対策も費用に影響します。ソフトウェアの価格だけで総額を判断することはできません。

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