これまでの産業用ロボットとの違い
産業用ロボットは、製造業や物流業など多くの産業で重要な役割を果たしてきました。これらのロボットは、主に一定の作業を正確かつ迅速に行うことを目的としています。しかし、近年の技術進歩により、従来の産業用ロボットとは一線を画す新しいロボットが登場しています。
一緒に働けるように設計
協働ロボットと産業用ロボットの違いを理解するための最も簡単な視点は、産業用ロボットが人間の作業員の代わりに働くように設計されているのに対して、協働ロボットは人間の作業員と一緒に働く(協業・協調)ように設計されている、ということです。協働ロボットは、人間の作業員だけで行うにはあまりにも危険であったり、大変な労力を要したり、うんざりするほど退屈だったりする作業を手助けし、それにより、製品の製造工程から工場作業員の仕事をなくさずに、安全かつ効率の高い作業環境を作り出すことができます。それとは対照的に、産業用ロボットは、製造工場で人間の作業員の手を借りずに製造工程のほぼ全体を自動化するために使用されます。協働ロボットはサイズが小型であり、人間に近接して作業する必要があるため、重量物を扱う製造工程用には設計されていません。産業用ロボットは、自動車の製造で使用されているロボットのように、重量やサイズの大きい材料を扱うことができますが、作業場所に人間が立ち入らないように安全柵を設置する必要があります。それに対して、協働ロボットは人間の近くで稼働させても十分に安全なので、事前にリスクアセスメントを行えば産業用ロボットのような安全対策用設備は必要ありません。なお、ISOでは、“協働ロボットとして使用できる産業用ロボットは、ISO 10218-1:2011(JIS B 8433-1: 2015)の要求事項に適合していなければならない。”と規定されている。
柔軟性と適応性の向上
従来の産業用ロボットは、固定された一連の動作を繰り返すことに特化しており、特定の作業を効率的に行うことが求められていました。例えば、自動車製造ラインでの溶接や塗装作業など、決まった手順を高精度で繰り返すタスクに最適化されていました。一方、協働ロボットは、タスクの変更や多様な作業に対応できる柔軟性を持っています。これには、プログラミングの容易さと作業環境に応じた動作の変更が含まれます。たとえば、協働ロボット(コボット)は、異なる作業者と協力して作業を進めることができ、人間が行う作業を補助する役割を果たすことが可能です。これにより、生産ラインの変更や新製品の導入時に柔軟に対応できるようになっています。
センサー技術とAIの活用
従来の産業用ロボットは、事前にプログラムされた動作を行うため、環境の変化や予期せぬ事態に対応する能力が限られていました。例えば、物体の位置がずれた場合でも、同じ動作を繰り返すため、ミスや事故の原因となることがありました。最近ではロボットに高度なセンサー技術とAIを活用することで、周囲の環境をリアルタイムで認識し、適応する能力を持たせることが可能になってきました。例えば、カメラやセンサーを用いて物体の位置や形状を把握し、AIがその情報を基に最適な動作を判断します。これにより、精密なピッキング作業や複雑なアセンブリ作業を自動化し、人間の介入を最小限に抑えることができます。協働ロボットを使用することで、AIなどにミスがあった場合でも安全面への大きな影響を防ぐことが可能です。